2019年4月から「特定技能」という在留資格が新設されます。
この「特定技能」ビザを取得することによって、「ビルクリーニング」の分野において、通常の就労ビザでは認められていなかった、外国人の単純労働が認められることになります。
「特定技能」ビザを取得できる業種は「特定産業分野」に限られますが、今回はこの「特定産業分野」の1つに含まれている、「ビルクリーニング」分野の「特定技能」ビザについて考えていきます。
皆様の参考になれば幸いです。
「特定技能」ビザ全般については、以下の記事で詳しく解説をしています。↓
・外国人の「特定技能」の在留資格について徹底解説します!
ビルクリーニング分野で「特定技能」の外国人を受け入れる目的
ビルクリーニング分野で「特定技能」の在留資格によって外国人を受け入れる目的・趣旨は、
「ビルクリーニング分野において深刻化する人手不足に対応するため、専門性・技能を生かした業務に即戦力として従事する外国人を受け入れることで、ビルクリーニング分野の存続・発展を図り、もって日本の経済・社会基盤の持続可能性を維持する。」
ことが目的とされています。
ビルクリーニング分野は人手不足
ビルクリーニングの業務に従事することができる「特定技能」ビザで外国人を受け入れる一つの理由として、ビルクリーニング分野の人手不足をあげることができます。
ビルクリーニング分野については、「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」の適用対象となる「特定建築物」が年々増加しています。
そのような事情から、ビル・建物清掃員の有効求人倍率は近年高い水準で推移し、平成 29 年度には 2.95 倍に達しており、人材の確保が困難な状況となっています。
また、平成 27 年国勢調査によると、「ビル・建物清掃員の職種」においては、従業者のうち 女性が 70.9 %を、65 歳以上の高齢者が 37.2 %を占めているなど、従前より、女性、 高齢者を積極的に雇用しているが、近年の人手不足に鑑み、女性や高齢者が他分野 で就労機会を多く得られるようになったためビルクリーニング分野を希望しなくなったことにより、人手不足が加速化していると考えられています。
さらに、「ビル・建物清掃員」の平成 29 年度 の地域ブロック単位の有効求人倍率は、最も高い中国地方が 3.80 倍、最も低い東北地方が 2.03 倍であり、全国的に人手不足が深刻な状況になっています。
このような状況から、人手不足の解消のために、特定技能外国人の受入れが急務であると考えられています。
特定建築物の定義
「建築物における衛生的環境の確保に関する法律第2条」では、上述した「特定建築物」を以下のように定義しています。
この法律において「特定建築物」とは、興行場、百貨店、店舗、事務所、学校、共同住宅等の用に供される相当程度の規模を有する建築物で、多数の者が使用し、又は利用し、かつ、その維持管理について環境衛生上特に配慮が必要なものとして政令で定めるものをいう。(一部抜粋)
ビルクリーニング分野では様々な取り組みも行われている
ビルクリーニング分野では、人手不足の解消のために様々な取り組みが行われています。
①生産性向上のための取組
例えば、
ビルクリーニング業者、メーカー、ビルオーナー等が連携して協議会を開催し、清掃機械の開発、業務用清掃ロボットの性能の検証やその導入促進に向けた検討を急 速に進めているほか、出勤状況をオンラインで把握する等の業務管理の効率化を図 るIT化を進めています。
②国内人材確保のための取組
例えば、
公益社団法人全国ビルメンテナ ンス協会において「ビルメンテナンス業高齢者雇用推進ガイドライン」を策定し、 同ガイドラインに基づく取組により業界の高齢者雇用を推進しています。
<参照:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 ビルメンテナンス業高齢者雇用推進ガイドライン>
また、若年者雇用の取組として、平成 28 年に、技能検定の対象であるビルクリーニング技能士について、単一等級から複数等級に制度変更することにより、技能レベル を段階ごとに確認できるようにすることによって、経験年数が少ない若者が、自分の技能レベルを確認しつつ意欲をもって業務に従事できるような環境を整備しています。
厚生労働省も、「ビルメンテナンス 業務に係る発注関係事務の運用に関するガイドライン」を策定し、ビルメンテナンス業者が品質確保の担い手を中長期的に育成・確保するための適正な利潤を確保できるよう、地方公共団体などに働きかけています。
外国人の受け入れ見込み数は?
ビルクリーニング分野における向こう5年間の受入れ見込数は、最大3万 7,000 人であり、これを向こう5年間の受入れの上限として運用していくことになります。
この受け入れ数の根拠は、
向こう5年間で9万人程度の人手不足が見込まれる中、今回の受入れは、毎年1 %程度(5年間で4万人程度)の生産性向上及び追加的な国内人材の確保(5年間 で1万 3,000 人程度)を行ってもなお不足すると見込まれる数を上限として受け入 れるものであり、過大な受入れ数とはなっていない。
というところからきています。
特定技能1号(ビルクリーニング分野)のポイント
ビルクリーニング分野において「特定技能1号」ビザを考えるにあたり知っておきたいポイントを以下に解説をしていきます。
また、現在ビルクリーニング分野の「特定技能」ビザについては、「特定技能2号」は認められていません。
そのため、今後、ビルクリーニング分野が「特定技能2号」の対象になれば、在留期限に上限がなくなりますので、長期で雇用することも可能になると考えられます。
技能水準及び評価方法等
「特定技能1号」ビザを取得するためには、「ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験」に合格をする必要があります。
「特定技能評価試験」に全般については、以下の記事で詳しく解説をしています。↓
・特定技能評価試験に求められる試験水準等を解説!
ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験
この試験は、
多数の利用者が利用する建築物(住宅を除く。)の内部を対象に、 場所、部位、建材、汚れ等の違いに対し、作業手順に基づき、自らの判断により、 方法、洗剤及び用具を適切に選択して清掃作業を遂行できるレベルであることを認定するものです。
この試験に合格することによって、ビルクリーニング分野において、一定の専門性・技能を用いて即戦力として稼働するために必要な知識や経験を有するものと認められます。
評価方法
試験言語:日本語
実施主体:公益社団法人全国ビルメンテナンス協会
実施方法:実技試験
実施回数:国内外でそれぞれ年おおむね1回から2回程度実施予定
開始時期:平成 31 年秋以降を予定
とされています。
また、以下の概要が「公益社団法人 ビルメンテナンス協会」から発表されています。↓
<参照:公益社団法人 ビルメンテナンス協会>
国内試験を受験できない人
国内で試験を実施する場合、
1、退学・除籍処分となった留学生
2、失踪した技能 実習生
3、在留資格「特定活動(難民認定申請)」により在留する者
4、在留資格「技能実習」による実習中の者
上記外国人は、在留資格の性格上、当該試験の受験資格を認めないとされています。
日本語能力水準及び評価方法等
「特定技能1号」ビザを取得する外国人には、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有するものことが求められますので、以下の試験の合格等が必要になります。
①日本語能力判定テスト(仮称)
この試験に合格することによって、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有するものと認められることから、基本的な日本語能力水準を有するものと評価されます。
評価方法について
実施主体:独立行政法人国際交流基金
実施方法:コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式
実施回数:年おおむね6回程度、国外実施を予定
開始時期:平成 31 年秋以降に活用予定
とされています。
②日本語能力試験(N4以上)
この試験に合格することによって、「基本的な日本語を理解することができる」 と認定されますので、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程 度の能力を有するものと認められ、本制度での受入れに必要となる基本的な日本語能力水準を有するものと評価されます。
評価方法
日本語能力試験は、
実施主体:独立行政法人国際交流基金及び日本国際教育支援協会
実施方法:マークシート方式
実施回数:国内外で実施。国外では 80 か国・地域・239 都市で年おおむね1回 から2回実施(平成 29 年度)
とされています。
日本語能力試験N4については以下の記事で解説をしています。↓
・特定技能ビザに必要な「日本語能力試験N4」とは?
技能実習を修了した外国人も特定技能に移行できる
「ビルクリーニング職種、ビルクリーニング作業」の第2号技能実習を修了した外国人は、「特定技能1号」に移行することができます。
「技能実習制度」については、以下の記事で詳しく解説をしています。↓
・技能実習生って何?外国人の技能実習制度について徹底解説!
ビルクリーニング分野の特定技能ビザの業務内容は?
ビルクリーニング分野において受け入れる「1号特定技能外国人」が従事することができる業務は、
多数の利用者が利用する建築物(住宅を除く。)の内部を対象に、衛生的環境の保護、美観の維持、安全の確保及 び保全の向上を目的として、「場所」、「部位」、「建材」、「汚れ」等の違いに対し、方法、洗剤及び用具を適切に選択して清掃作業を行い、建築物に存在する環境上の汚染物質を排除 し、清潔さを維持する業務を行うことができます。
つまり、「建築物内部の清掃」業務になります。
外国人を雇用する会社(特定技能所属機関)に必要なこと
ビルクリーニング分野で「特定技能」ビザを取得して外国人を雇用する「特定技能所属機関」にも求められることがあります。
ビルクリーニング分野の「特定技能ビザ」で外国人の方を雇用する場合は、雇用する側に
・「建築物清掃業」、または「建築物環境衛生総合管理業」の登録を受けていること
・ビルクリーニング特定技能協議会(仮称)の構成員になること
などが求められます。
— ひーくん@外国人ビザの専門家 (@coolwork3) January 18, 2019
1、都道府県知事より、「建築物衛生法第 12 条の2第1項第 1号」に規定する「建築物清掃業」又は同項第8号に規定する「建築物環境衛生総合管理業」の登録を受けていること。
2、厚生労働省が設置する、「ビルクリーニング分野の業界団体」、「試験実施主体」、「制度関係機関」その他の関係者で構成する「ビルクリーニング分野特定技能協議会(仮称)」の構成員になること。
3、「ビルクリーニング 分野特定技能協議会(仮称)」に対し、必要な協力を行うこと。
4、厚生労働省又はその委託を受けた者が行う調査又は指導 に対し、必要な協力を行うこと。
上記事項について特定技能所属機関に条件が課されます。
特定技能所属機関については、以下の記事も参考にしてください。↓
・特定技能で受入れ先になる特定技能所属機関の基準について
外国人の雇用形態について
「特定技能」ビザで外国人を雇用する場合は、直接雇用であることが必要です。
したがって、派遣での就業はできませんので、注意が必要です。
まとめ
今回は、「ビルクリーニング分野」における「特定技能」ビザについて考えてきました。
建物の衛生的環境の保護や安全の確保など行う上で、「ビルクリーニング業」はとても大切な分野です。
「特定技能」ビザが上手く活用されることによって、人手不足の状況を少しでも解消することができるように、私たちも、「特定技能」ビザの動向を慎重にチェックしていく必要があります。
今回の記事が皆様の参考になれば幸いです。
「特定技能」ビザについて解説した記事一覧は、以下の記事にまとめています。↓
・特定技能の在留資格について解説した記事一覧(まとめ)