2019年4月から新しい在留資格「特定技能」が新設されます。
「特定技能」ビザは、「特定産業分野」について就労する外国人が取得することができます。
この「特定産業分野」に、「電気・電子情報関連産業分野」が含まれています。
つまり、「特定技能」ビザを取得することで、通常の就労ビザでは認められていなかった、外国人の単純労働が認められることになります。
そこで、今回は「電気・電子情報関連産業分野」の「特定技能」ビザについて考えていきます。
「特定技能」ビザ全般については、以下の記事で詳しく解説をしています。↓
・外国人の「特定技能」の在留資格について徹底解説します!
電気・電子情報関連産業分野で「特定技能」の外国人を受け入れる目的
電気・電子情報関連産業分野で「特定技能」の在留資格によって外国人を受け入れる目的・趣旨は、
「電気・電子情報関連産業分野において深刻化する人手不足に対応するため、専門性・技能を生かした業務に即戦力として従事する外国人を受け入れることで、本分野の存続・発展を図り、もって日本の経済・社会基盤の持続可能性を維持する。」
ことが目的とされています。
電気・電子情報関連産業分野は人手不足
電気・電子情報関連産業の業務に従事することができる「特定技能」ビザで外国人を受け入れる一つの理由として、電気・電子情報関連産業分野の人手不足をあげることができます。
自動車の電動化に伴う電子部品需要の増加等により需要が拡大する中、平成 29 年 度の「電気・電子情報関連産業」に関連する未充足求人数は、直近3年分の平均値から 約 7,000 人であり、5年後には、年2%程度と予測される電気・電子情報関連産業 の需要拡大とこれに伴う労働需要の拡大が続くと約6万 2,000 人の人手不足が生じるものと推計されています。
また、「電気・電子情報関連産業分野」に関連する職業分類における有効求人倍率(平成 29 年度)は 2.75 倍となっており、当該分野に係る職種の有効求人倍率(平成 29 年度) は、
例えば、「プラスチック製品・製造工 3.70 倍」、「製品包装作業員 3.60 倍」、「金属溶接 ・溶断工 2.50 倍」となっている等、深刻な人手不足の状況であることがわかります。
電気・電子情報関連産業分野では様々な取り組みも行われている
電気・電子情報関連産業分野では、人手不足の解消のために様々な取り組みが行われています。
①生産性向上のための取組
各企業は、
・生産プロセスの見える化等の工場のデジタル化や
・IoT・AI 等の活用による生産プロセスの刷新により、作業の定量化や搬送工程の自動化
等、 生産性向上を図る取組を実施しています。
また、経済産業省も、企業による設備投資やIT導入を支援する施策によ り、企業による生産性向上の取組を支援している。
②国内人材確保のための取組
各企業は、
・社外のシニアやベテラン人材、主婦層を含む、女性の採用強化
・多様で柔軟な働き方を実現するための職場環境整備に取り組んでおり、専門性が高くモチベーションある社員の 65 歳以降の継続雇用や、女性が永年勤務しやすい人事制度整備
等、国内人材確保を図る取組を実施しています。
また、経済産業省も、
・中小企業が女性、高齢者等多様な人材を活用する 好事例をまとめた「人手不足ガイドライン」の普及
・賃上げに積極的な企業への税制支援
・下請等中小企業の取引改善に向けた取組
等を行い、企業による国内人材確保の取組を促進しています。
外国人の受け入れ見込み数は?
「電気・電子情報関連産業分野」における向こう5年間の受入れ見込数は、最大 4,700 人であり、これを向こう5年間の受入れの上限として運用が行われます。
この受け入れ数の根拠は、
「向こう5年間で6万 2,000 人程度の人手不足が見込まれる中、今回の受入れは、 毎年1%程度の労働効率化(5年間で5万 4,000 人程度)による生産性向上及び追加的な国内人材の確保(5年間で 3,000 人~ 4,000 人程度)を行ってもなお不足すると 見込まれる数を上限として受け入れるものであり、過大な受入れ数とはなっていない。」
というところからきています。
特定技能1号(電気・電子情報関連産業分野)のポイント
電気・電子情報関連産業分野において「特定技能1号」ビザを考えるにあたり知っておきたいポイントを以下に解説をしていきます。
また、現在電気・電子情報関連産業分野の「特定技能」ビザについては、「特定技能2号」は認められていません。
そのため、今後、電気・電子情報関連産業分野が「特定技能2号」の対象になれば、在留期限に上限がなくなりますので、長期で雇用することも可能になると考えられます。
技能水準及び評価方法等
「特定技能1号」ビザを取得するためには、「製造分野特定技能1号評価試験(仮称)」に合格をする必要があります。
この試験は、
電気・電子情報関連産業分野における業務について、監督者の指示を理解し的確に業務を遂行又は自らの判断により業務を遂行できる者であることを認定するものです。
この試験に合格することによって、一定の専門性・技能を用いて即戦力として稼働するために必要な知識や経験を有するものと認められます。
また、「電気・電子情報関連産業分野」は、「特定技能」ビザの対象となる「素形材産業」「産業機械製造業分野」と製造現場で従事する業務の多くが共通していることから、技能水準及び評価方法等を統一し、「製造分野特定技能1号評価試験(仮称)」として共通の評価試験が実施されることになります。
「特定技能評価試験」に全般については、以下の記事で詳しく解説をしています。↓
・特定技能評価試験に求められる試験水準等を解説!
評価方法
試験言語:主に現地語を予定
実施主体:経済産業省が選定した民間事業者
実施方法:学科試験及び実技試験
実施回数:年1回程度、国外実施を予定(必要に応じて国内での実施も検討)
開始時期:平成31年度内予定
とされています。
国内試験を受験できない人
国内で試験を実施する場合、
1、退学・除籍処分となった留学生
2、失踪した技能 実習生
3、在留資格「特定活動(難民認定申請)」により在留する者
4、在留資格「技能実習」による実習中の者
上記外国人は、在留資格の性格上、当該試験の受験資格を認めないとされています。
日本語能力水準及び評価方法等
「特定技能1号」ビザを取得する外国人には、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有するものことが求められますので、以下の試験の合格等が必要になります。
①日本語能力判定テスト(仮称)
この試験に合格することによって、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有するものと認められることから、基本的な日本語能力水準を有するものと評価されます。
評価方法について
実施主体:独立行政法人国際交流基金
実施方法:コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式
実施回数:年おおむね6回程度、国外実施を予定
開始時期:平成31年秋以降に活用予定
とされています。
②日本語能力試験(N4以上)
この試験に合格することによって、「基本的な日本語を理解することができる」 と認定されますので、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程 度の能力を有するものと認められ、本制度での受入れに必要となる基本的な日本語能力水準を有するものと評価されます。
評価方法
日本語能力試験は、
実施主体:独立行政法人国際交流基金及び日本国際教育支援協会
実施方法:マークシート方式
実施回数:国内外で実施。国外では80か国・地域・239都市で年おおむね1回か ら2回実施(平成29年度)
とされています。
日本語能力試験N4については以下の記事で解説をしています。↓
・特定技能ビザに必要な「日本語能力試験N4」とは?
技能実習を修了した外国人も特定技能に移行できる
電気・電子情報関連産業分野に関連する第2号技能実習を修了した外国人は、各業務における「特定技能1号」に移行することができます。
業務内容と技能実 習2号移行対象職種において修得する技能との具体的な関連性は、以下の通りです。↓
<参照:「電気・電子情報関連産業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」に係る運用要領から>
また、以下に「電気・電子情報関連産業分野」「素形材産業分野」「産業機械製造業分野」の3つの製造業における、技能実習からの移行に関するイメージ図を掲載しておきます。↓
<参照:経済産業省 製造産業局 総務課 製造業における外国人材の受入れについてより>
「技能実習制度」については、以下の記事で詳しく解説をしています。↓
・技能実習生って何?外国人の技能実習制度について徹底解説!
電気・電子情報関連産業分野の特定技能ビザの業務内容は?
電気・電子情報関連産業分野において受け入れる「1号特定技能外国人」が従事することができる業務は、
上述した試験おいて合格した区分に応じて就業が可能になります。
業務内容について
以下に、各区分おける業務内容を記載していきます。
・機械加工(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、旋盤、フライス盤、ボ ール盤などの各種工作機械や切削工具を用 いて金属材料等を加工する作業に従事)
・金属プレス加工(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、金型を用いて金 属材料にプレス機械で荷重を加えて、曲げ、 成形、絞り等を行い成形する作業に従事)
・工場板金(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、各種工業製品に使われる金属薄板の加工・組立てを行う作業に従事)
・めっき(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、腐食防止等のため金属等の材料表面に薄い金属を被覆する作業に従事)
・仕上げ(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、手工具や工作機械により部品を加工・調整し、精度を高め、部品の仕上げ及び組立てを行う作業に従事)
機械保全(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、工場の設備機械の故障 や劣化を予防し、機械の正常な運転を維持 し保全する作業に従事)
・電子機器組立て(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、電子機器の組立て及びこれに伴う修理を行う作業に従事)
・電気機器組立て(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、電気機器の組立てや、それに伴う電気系やメカニズム系の調整や検査を行う作業に従事)
・プリント配線板製造(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、半導体等の電子部品を配列・接続するためのプリント 配線板を製造する作業に従事)
・プラスチック成形(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、プラスチックへ 熱と圧力を加える又は冷却することにより所定の形に成形する作業に従事)
・塗装(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、塗料を用いて被塗装物を塗膜で覆う作業に従事)
・溶接(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、熱又は圧力若しくはその両 者を加え部材を接合する作業に従事)
・工業包装(指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、工業製品を輸送用に包装する作業に従事)
の業務区分になります。
また、当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務(金属プレスの例:材料・製品の運搬、加工品の切削・ばり取り・検査業務等)に付随的に従 事することは差し支えないとされています。
以下、一覧です。↓
<参照:電気・電子情報関連産業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針より>
電気・電子情報関連産業分野の対象
ここでいう電気・電子情報関連産業分野の対象は、「日本標準産業分類」に該当する事業者が行う業務となっています。
「日本標準産業分類」では、
28 電子部品・デバイス・電子回路製造業
29 電気機械器具製造業(ただし、2922 内燃機関電装品製造業及び素形材産業分野に掲げられた対象業種を除く。)
30 情報通信機械器具製造業
が該当します。
参照:日本標準産業分類
外国人を雇用する会社(特定技能所属機関)に必要なこと
電気・電子情報関連産業分野で「特定技能」ビザで外国人を雇用する「特定技能所属機関」にも求められることがあります。
1、「製造業外国人材受入れ協議会(仮称)」の構成員になること。
2、製造業外国人材受入れ協議会が行う一般的な指導、報告の徴収、資料の要求、 意見の報告又は現地調査等その他に対し、必要な協力を行うこと。
上記の事項について「特定技能所属機関」に条件が課されます。
「製造業特定技能外国人受入れ協議・報告会」については以下の記事で解説をしています。↓
・製造業特定技能外国人受入れ協議・報告会について解説!
また、特定技能所属機関については、以下の記事も参考にしてください。↓
・特定技能で受入れ先になる特定技能所属機関の基準について
外国人の雇用形態について
「特定技能」ビザで外国人を雇用する場合は、直接雇用であることが必要です。
したがって、派遣での就業はできませんので、注意が必要です。
経済産業省が所管する「素形材産業分野」「産業機械製造業分野」「電気・電子情報関連産業分野」における、外国人従業員の相談窓口については、以下の記事で解説をしています。↓
・【特定技能】製造業の外国人従業員向け相談窓口について解説
まとめ
今回は、電気・電子情報関連産業分野における「特定技能」ビザについて考えてきました。
2019年4月からスタートする「特定技能」ビザについては、今後の動向をしっかりと見ていくことが大切なことになります。
今回の記事が皆様の参考になれば幸いです。
「特定技能」ビザについて解説した記事一覧は、以下の記事にまとめています。↓
・特定技能の在留資格について解説した記事一覧(まとめ)