外国人がビザを申請する際に、行政書士等が「申請取次」として、申請者である外国人に代わって、出入国在留管理庁に対して、申請をすることができます。
しかし、近年のITサービスの発達により、「外国籍社員のビザ申請・管理が簡単にできるクラウド型サービス」というものが開発されてきました。
そこで今回は、この「クラウド型サービス」が、「行政書士法第1条の2」に規定されている「報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成すること」に該当しないのか。ということについて考えていきたいと思います。
皆様の参考になれば幸いです。
外国籍社員を雇用する時に知っておきたいことは以下の記事で解説をしています。↓
・外国人を雇用したい!知っておきたいポイントを解説します!
外国籍社員のビザ申請・管理が簡単にできるクラウド型サービスとは?
今回、法務省が行政書士法に違反するかどうかの回答を行なったクラウドサービスとは、
「外国籍社員のビザ申請・管理が簡単にできるクラウド型サービスを提供することで、利用者は、クラウドサービスを提供する事業を行う者のシステム上にて情報を入力することで、申請書類に当該利用者の情報が反映され、電磁的記録にて申請書類を出力することができる。」ものであるとされています。
また、「当該利用者が希望する際には、当該システムを利用して、事業者と提携している行政書士事務所又は行政書士法人に所属する行政書士に、申請等取次を依頼可能である。」サービスです。
クラウドサービスを利用する時の流れは?
このようなクラウドサービスとは、以下のような流れを取ることが想定されます。
企業がクラウドサービスを利用する場合
①本サービスに登録を希望する企業が、本サービスに登録を行い、利用開始。
②登録企業の人事労務担当者が、採用予定又は雇用してい る外国人材を事業者サービスへ追加。
③人事労務担当者が、本サービスを利用して申請書類を作成。
④人事労務担当者が、③にて作成した申請書類を地方出入国在留管理局に提出。
⑤登録企業が、申請書類の提出にあたり、提携行政書士を通じての提出を希望する場合には、 提携行政書士が地方出入国在留管理局に赴き申請書類を提出。
上記のような流れになります。
個人が利用する場合
①本サービスに登録を希望する外国人材が、本サービスに登録を行い、利用開始。
②当該外国人材が、本サービスを利用して申請書類を作成。
③当該外国人材が、②にて作成した申請書類を地方出入国在留管理局に提出。
④当該外国人材が、申請書類の提出にあたり、提携行政書士を通じての提出を希望する場合に は提携行政書士が地方出入国在留管理局に赴き申請書類を提出。
個人で利用する場合は上記のような流れになります。
クラウドサービスが行政書士法に違反するかどうか
ここで、クラウドサービスが行政書士法に違反するかどうかが問題になります。
行政書士法第1条の2では以下のように規定されています。
行政書士法第1条の2
「行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては 認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供 されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この 条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく 図面類を含む。)を作成することを業とする。」
と規定されています。
つまり、クラウドサービスのシステム上にて、在留資格に関する申請書類を作成できる点が、 行政書士法第1条の2に規定されている「報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義 務又は事実証明に関する書類を作成すること」に該当しないか。ということが問題になります。
法務省の回答では行政書士法には違反しない
上述した行政書士法第1条の2の規定はあるものの、法務省では、
「本件において、事業者が新たに提供しようとするサービスは、利用者が入力した内容をオンライン上で申請書類の様式に反映させるものであるところ、一般的に、事業者が、Web上 に一定の入力フォームを用意し、利用者が自己の判断に基づき、その入力フォームに用意さ れた項目に一定の事項を入力し、当該利用者自身が申請書類を作成する行為(これらの行為 を可能とするために提供される役務を含む。)は、行政書士法第1条の2第1項に規定する事務を業として取り扱ったとの評価まではされないものと考えられる。」
という回答が発表されています。
つまり、この回答から行政書士法には違反しない方向で考えられています。
その他外国人向けのクラウドサービスで注意しなければならない点
外国籍社員のビザ申請等にかかるクラウドサービスについては、上述したとおり、行政書士法には違反しないと考えられています。
しかし、以下の注意しなければならない点が考えられます。
①特定の申請については、施行規則上、取次を依頼する主体が定められていること。
(例えば在留資格変更許可申請について、受入れ機関が取次を依頼することはできない。)
・在留資格認定証明書交付申請については、「日本にある外国人又は法第7条の2第2項に規定する代理人」(施行規則第6条の2第4項)
・在留資格変更許可申請等入管法第61条の9の3第1項第3号に規定する申請については、「日本にある外国人又はその法定代理人」(施行規則第59条の6第3項)
・「資格外活動許可」「申請内容の変更の申出」
など依頼できる主体が決まっているものがあります。
②申請等取次は、①に記載した者から取次を行うことが認められている行政書士に直接依頼をする必要があること。
③地方出入国在留管理局に提出する各種申請書等は、施行規則によりその様式が定められいるため、様式上主体を定めた上で、その主体による署名や記名・押印が必要とされていることから、これに従って、署名や記名・押印をする必要があること。
などの注意点があります。
外国人の在留資格については、以下の記事で詳しく解説をしています。↓
・外国人の在留資格制度とは?わかりやすく徹底解説します!
まとめ
「AI」や「IOT」などの技術が発達してきたことによって、クラウドを利用したサービス等もこれからはもっと増えてくれると考えられます。
クラウドサービスを提供する事業者にとっては、法律に違反しないよいうにコンプライアンスを徹底することが求められます。
また、私たち行政書士にとっても、これからは電子申請の方向に向かっていくと考えられますので、書類作成や提出だけではなく、別の付加価値を見つけていくことが求められる時代に入ってくると予測されます。
これからの時代に遅れないように事業のありかたを考えていかなければなりません。
今回の記事が皆様の参考になれば幸いです。
外国籍社員の雇用する時に、該当する可能性がある「技術・人文知識・国際業務」の在留資格については、以下の記事で詳しく解説をしています。↓