日本に滞在している外国人は在留資格を持って日本に滞在しています。
その外国人が今後も日本に生活の本拠をおいて過ごす場合に、最終的に行き着くビザが「永住権」です。
永住権は入国管理局が行う在留に関する審査として最終のものになるため、厳しく審査が行われます。
そこで、今回は外国人の永住権について書いていきます。
皆様の参考になれば幸いです。
永住権を取得して日本で生活している外国人の数は?
永住権で日本に滞在している外国人の数は、2017年末のデータでは、749,191人と発表されています。
永住権とは?
永住権は英語で「Permanent residency」と言い、一般的には「永住ビザ」と言われています。
永住権とは、外国人が後述する要件に適合し、さらにその外国人が永住することによって、日本の利益に合致すると認めた時に限り、法務大臣が許可することができる在留資格です。
永住者は、「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」ビザと同様に、就労制限がありませんので、どのような仕事をしても問題はありません。
さらに、「永住」という名称の通り、他の在留資格とは異なり、「在留期間」にも制限されることがなくなります。
そのため日本に長く住むことを考えている外国人の多くが、最終的に目指すビザの一つであるということができます。
また、上述した通り「就労制限」や「在留期間」の制限がないことから、当然「永住権」を取得するためには、厳しい審査をクリアしなければなりません。
在留資格一般については以下で詳しく解説をしています。↓
・外国人の在留資格制度とは?わかりやすく徹底解説します!
永住権の許可率は?
毎年多くの外国人が永住許可申請を行い「永住権」を取得しています。
法務省から発表されているデータでは、2016年度の永住許可申請の件数は55,359件であり、そのうち永住許可が決定された数は35,679件で、永住権の許可率は67.5%と発表されています。
(以下、法務省から発表されているデータを参照↓)
参照:法務省 在留審査より
永住権を取得するためのポイントについて
永住権を取得するためには、法務大臣に対して永住許可を申請する必要があります。
永住権に関する根拠は「出入国管理及び難民認定法22条」に規定されています。
出入国管理及び難民認定法22条(永住許可)
在留資格を変更しようとする外国人で永住者の在留資格への変更を希望するものは、法務省令で定める手続により、法務大臣に対し永住許可を申請しなければならない。
2 前項の申請があつた場合には、法務大臣は、その者が次の各号に適合し、かつ、その者の永住が日本国の利益に合すると認めたときに限り、これを許可することができる。ただし、その者が日本人、永住許可を受けている者又は特別永住者の配偶者又は子である場合においては、次の各号に適合することを要しない。
一 素行が善良であること。
二 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること。
3 法務大臣は、前項の許可をする場合には、入国審査官に、当該許可に係る外国人に対し在留カードを交付させるものとする。この場合において、その許可は、当該在留カードの交付のあつた時に、その効力を生ずる。
永住許可取得の要件について
上述した通り「出入国管理及び難民認定法」では、永住許可の要件として
1、日本国の利益に合すると認めたとき
2、素行が善良であること。
3、独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること。
大きく3つの要件について規定されています。
以下にこの3つの要件を解説していきます。
①その者の永住が日本国の利益に合すると認められること
「日本国の利益に合すると認められること」とは、法務省から発表されている永住許可のガイドラインでは以下のように記載されています。
1、引き続き10年以上日本に在留していること
「ア 原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。ただし,この期間のうち,就労資格又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する。」と永住許可のガイドラインでは記載されています。
そのため、原則は10年日本に継続して住んでいることで要件を満たしますが、
例えば、
「留学」ビザで6年間日本に滞在して、その後「技術・人文知識・国際業務」ビザで4年間日本に滞在している場合などは、10年以上日本に住んでいますが、要件を満たさないことになります。
これは、「留学」ビザは日本への定着性がないと判断されるためです。
そのため、「留学ビザ」4年間日本に住み、「技術・人文知識・国際業務」ビザで6年日本に住んでいた場合は、10年としての要件を満たすことになります。
2、罰金刑・懲役刑を受けていない。納税義務等公的義務を履行している
「イ 罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。納税義務等公的義務を履行していること。」と永住許可のガイドラインでは記載されています。
「懲役刑を受けていない」ことや「納税、年金の支払いなどの公的義務」をしっかり行なっていることはわかりやすいですが、「罰金刑」には注意が必要です。
例えば、交通違反であっても「罰金」を課されている場合は、永住権の申請ができなくなりますので、気をつけなければなりません。
交通違反などで「反則金」であれば、「罰金」ではありませんので、繰り返し行なっていない場合は申請をすることが可能です。
3、最長の在留期間を持っていること
永住許可を受けるためには、最長の在留期間を持っていることが必要になります。
現行法上では、5年が最長の在留期間になりますが、当面は3年の在留期間でも申請をすることが可能です。
ここで実務上注意しておきたいことは、例えば
「技術・人文知識・国際業務」ビザで現在5年の在留期限を持って、9年日本に住んでいる外国人が、事業を行うということで「経営管理」ビザを取得した場合、「在留期間が1年」になってしまうことがあります。
このような場合は、翌年10年日本に住んだことになったとしても、在留期間が1年になってしまっているので、永住許可の申請ができなくなってしまいます。
在留資格を変更するということは、そのようなリスクがあるということを知っておく必要があります。
「経営管理」ビザについては以下の記事で詳しく解説をしています。↓
・日本で起業!経営管理ビザについて徹底解説!
4、公衆衛生
「エ 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。」と永住許可のガイドラインでは記載されています。
「公衆衛生上の観点」とは感染症などの問題はないのか。などが考慮されます。
②素行が善良であること
「素行が善良であること」とは、法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること。が求められます。
そのため、交通違反を繰り返している場合や、飲酒運転などで警察に捕まっている場合などは、不許可になる可能性が高くなりますので注意が必要です。
③独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」とは、日常生活において公共の負担にならず、その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること。が求められます。
つまり、「生活保護」の受給を受けている場合などは、永住許可の申請が難しくなります。
また、「世帯」の収入が見られますので、家族がいる場合などは、家族を養える程度の収入があることを「課税証明書」などで立証していくことになります。
10年の在留には特例がある
上述した通り、「永住権」を取得するためには、「引き続き10年日本に在留」していることが必要でした。
しかし、以下の場合は、「原則在留10年に関する特例」を」受けることができます。
原則10年在留の特例を受けることができる外国人
①日本人,永住者及び特別永住者の配偶者の場合,実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し,かつ,引き続き1年以上本邦に在留していること。その実子等の場合は1年以上本邦に継続して在留していること
②「定住者」の在留資格で5年以上継続して本邦に在留していること
③難民の認定を受けた者の場合,認定後5年以上継続して本邦に在留していること
④外交,社会,経済,文化等の分野において我が国への貢献があると認められる者で,5年以上本邦に在留していること
※「我が国への貢献」に関するガイドラインを参照。
⑤地域再生法(平成17年法律第24号)第5条第16項に基づき認定された地域再生計画において明示された同計画の区域内に所在する公私の機関において,出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の規定に基づき同法別表第1の5の表の下欄に掲げる活動を定める件(平成2年法務省告示第131号)第36号又は第37号のいずれかに該当する活動を行い,当該活動によって我が国への貢献があると認められる者の場合,3年以上継続して本邦に在留していること
⑥出入国管理及び難民認定法別表第1の2の表の高度専門職の項の下欄の基準を定める省令(以下「高度専門職省令」という。)に規定するポイント計算を行った場合に70点以上を有している者であって,次のいずれかに該当するもの
ア 「高度人材外国人」として3年以上継続して本邦に在留していること。
イ 3年以上継続して本邦に在留している者で,永住許可申請日から3年前の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に70点以上の点数を有していたことが認められること。
⑦高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上を有している者であって,次のいずれかに該当するもの
ア 「高度人材外国人」として1年以上継続して本邦に在留していること。
イ 1年以上継続して本邦に在留している者で,永住許可申請日から1年前の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上の点数を有していたことが認められること。
「高度専門職」については、以下で詳しく解説をしています。↓
・外国人の高度人材ポイント制!高度専門職について徹底解説
上記①〜⑦に該当する場合は、10年より短い期間で永住許可申請をすることが可能になります。
特定技能と技能実習は10年の期間には参入されない
永住権を取得するためには、就労資格や居住資格を持って、5年以上日本に在留し、原則10年間以上日本に在留する必要があることは上述しました。
しかし、永住権に関するガイドラインが改定され、就労資格としての5年については、「在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。」とされましたので、注意が必要です。
技能実習及び特定技能の在留資格については、以下の記事で解説をしています。↓
・技能実習生って何?外国人の技能実習制度について徹底解説!
永住許可の申請方法は?
永住許可は、住居地を管轄する地方入国管理官署に申請することになります。
管轄する入国管理局の情報は入国管理局のホームページから検索をすることができます。↓
・入国管理局のホームページ
以下に永住許可の手続きについて書いていきます。
永住許可の申請ができる人
永住許可の申請ができる人は以下の通りです。
1、申請人本人(日本での滞在を希望している外国人本人)
2、代理人・申請人本人の法定代理人
3、取次者
(1)地方入国管理局長から申請取次の承認を受けている次の者で,申請人から依頼を受けたもの
ア 申請人が経営している機関又は雇用されている機関の職員
イ 申請人が研修又は教育を受けている機関の職員
ウ 外国人が行う技能,技術又は知識を修得する活動の監理を行う団体
エ 外国人の円滑な受入れを図ることを目的とする公益法人の職員
(2)地方入国管理局長に届け出た弁護士又は行政書士で,申請人から依頼を受けたもの
(3)申請人本人が16歳未満の場合又は疾病(注)その他の事由により自ら出頭することができない場合には,その親族又は同居者若しくはこれに準ずる者で地方入国管理局長が適当と認めるもの
永住許可に必要な書類
永住許可申請は、申請人が
①「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の在留資格
②「定住者」の在留資格
③就労関係の在留資格(「技術・人文知識・国際業務」「技能」など)及び家族滞在の在留資格
④「高度人材外国人」
などのケースのように、在留資格によって必要な書類が異なってきますので、以下「法務省」のホームページを参照してください。↓
・法務省ホームページ
永住許可が審査される標準処理期間について
永住権の標準処理期間は「4ヶ月」です。
ただし、この期間は目安ですので、半年や1年以上審査に時間がかかることもありますので、余裕を持って申請をすることをオススメします。
永住権には身元保証人が必要
永住権を申請するためには身元保証にが必要になります。
身元保証人については、以下の記事で詳しく解説をしています。↓
・外国人の身元保証人とは?わかりやすく解説します!
永住許可を取得するメリットは?
永住権を取得することで様々なメリットを受けることができます。
以前のツイートから引用です。↓
外国人が日本で永住権を取得するメリット
・在留期間が期限になる・在留活動に制限がなくなる
・配偶者や子供が永住許可申請をする時に、永住権の要件が緩和される
・永住権を取得することで、日本に生活基盤があることの証明になり、社会生活で信用が得られる
などのメリットがあります。
— ひーくん@外国人ビザの専門家 (@coolwork3) December 28, 2018
例えば、
①在留期間が無期限になる。
②他の法令で制限がある場合を除き、在留活動に制限がなくなる。
③配偶者や子供が永住許可申請をする時に、永住権の要件が緩和される。
④永住権を取得することで、日本に生活基盤があることの証明となり、社会生活で信用が得られる。
などのメリットを受けることができます。
在留資格の取り消し・退去強制させられることもある
「永住権」を取得すれば、在留期間が無期限になりますので、日本にずっと住むことができます。
しかし、「永住権」を取得していたとしても、「在留資格の取り消し」や「退去強制」事由に該当すれば、取り消しの対象になりますし、退去強制させられることもあります。
在留資格の取り消しについては、以下の記事で詳しく解説をしています。↓
・在留資格の取り消し制度について解説していきます!
永住権の申請中は在留期限に注意
永住権を取得するための要件を全て満たし、申請書類も完成したら出入国在留管理庁に申請することになります。
ここで、注意しておかなければならないことは、永住許可申請の審査中であっても、現在保有している在留資格に係る在留期間の満了日が経過するまでに、その在留資格に係る在留期間更新許可申請を行わなかった場合、在留期間が満了日を経過した時点で不法残留になってしまいます。
例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格から、永住許可申請を行なった場合、その審査中に「技術・人文知識・国際業務」の在留期間が満了する場合は、更新許可申請を行う必要があるということです。
通常、在留資格の更新や変更申請を行なった場合は、「在留期間の特例制度」があるため、申請中に在留期間が満了したとしても、2ヶ月間は適法に在留が認められますが、永住許可申請の場合はそのような制度がないため混同しないよいうに注意する必要があります。
永住権の更新を忘れないように
永住権は就労ビザとは異なり、在留期限の定めがなく日本で生活をすることができるようになります。
しかし、永住者であっても在留カードの期限はありますので、在留カードの期限満了日までに更新をする必要があります。
ちなみに、在留カードは有効期間の満了日の2か月前から更新ができます。
また、在留カードの有効期間の満了日が、16際の誕生日の方は、6ヶ月前から更新することが可能です。
在留期間の有効期間の満了日は在留カードに記載されていますので、忘れていて更新をしていなかったということにならないように、しっかりと覚えておくようにしておきましょう。
<参照:法務省「永住者の方へ」 (日本語版)から>
永住権と帰化の違いは?
「永住ビザを取得するか。帰化をするかで迷っている」という相談を良く受けます。
そこで、「永住権」と「帰化」の違いについて簡単に解説をしていきます。
国籍
永住権:本国の国籍のまま変わらない。
帰化:帰化により従前の国籍は喪失。完全に日本国籍になる。
住所要件
永住権:原則10年
帰化:原則5年
根拠となる法律
永住権:出入国管理及び難民認定法
帰化:国籍法
取り消し・退去について
永住権:入管法上の在留資格の取り消し・退去強制となることもある。
帰化:日本国籍が取り消されることはない。
在留カード
永住権:在留カードの更新が必要。
帰化:日本国籍なので在留カードはない。
在留カードについては以下の記事で詳しく解説をしています。↓
・外国人の在留カードについてわかりやすく解説します!
まとめ
今回は、「永住権」について詳しく解説をしてきました。
「永住権」を取得することで、多くのメリットを受けることができますので、交通違反などで申請ができなくならないように、日常から法令遵守の意識を持って生活することが大切です。
今回の記事が皆様の参考になれば幸いです。