外国人を日本の企業で雇用する場合は、オンライン、若しくはハローワークに「外国人の雇用状況」を届出る義務が全ての事業主の責務になります。
そこで、今回は外国人を雇用した時、また離職した時に必要になる「外国人の雇用状況の届出」について解説していきます。
皆様の参考になれば幸いです。
外国人雇用状況の届出とは?
「外国人雇用状況の届出」とは、
雇用対策法に基づいて、外国人を雇用する事業主には、外国人労 働者の雇入れおよび離職の際に、その「氏名、在留資格」などについて、ハローワークへ届け出ることが義務づけられています。
そして、「外国人雇用状況の届出」は、雇入れの場合は翌月の10日までに、離職の場合は翌日から起算して10日以内に届出ることが必要になります。
また、雇用保険の対象にならない外国人労働者の雇入れや、離職の場合にも、外国人雇用状況届出書に、その外国人の氏名・在留資格・在留期限・生年月日・性別・国籍などを記載し、翌月末日までにハローワークに届出を行う必要があります。
このような手続きを「外国人雇用状況の届出」といいます。
「外国人雇用状況の届出」を行うことによって、ハローワークでは、雇用環境の改善に向けて、 事業主の方への助言や指導、離職した外国人への再就職支援が行われます。
「外国人雇用状況の届出」について根拠となる法律は、「雇用対策法第28条」に規定されています。
雇用対策法第28条
事業主は、新たに外国人を雇い入れた場合又はその雇用する外国人が離職した場合には、厚生労働省令で定めるところにより、その者の氏名、在留資格(出入国管理及び難民認定法第二条の二第一項に規定する在留資格をいう。次項において同じ。)、在留期間(同条第三項に規定する在留期間をいう。)その他厚生労働省令で定める事項について確認し、当該事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。
外国人雇用状況の届出状況は?
「外国人雇用状況」の届出状況は、厚生労働省の発表によると、2017年10月末現在で1,278,670人の外国人労働者の届出がされていると発表されています。
また、在留資格別では、「専門的・技術的分野」の労働者が238,412人(うち「技術・人文知識・国際業務」は180,367人)となっており、永住者や永住者を配偶者に持つ人など「身分に基づく在留資格」は459,132人と発表されています。
在留資格別の雇用状況↓
外国人雇用状況の届出対象になる外国人は?
「外国人雇用状況の届出」対象になる外国人は、「外交」「公用」以外の在留資格の方が対象になります。
ただし、「特別永住者」の方は、特別の法的地位が与えられており、日本における活動に制限がありません。
そのため、「特別永住者」の方は、外国人雇用状況の届出制度の対象外とされていますので、確認・届出をする必要はありません。
以下に、もう少し詳しく書いていきます。
外国人正社員の場合
正社員の場合は、全ての外国人社員が届出の対象になります。
外国人アルバイトの場合
留学生等が行うアルバイトも届出の対象になります。
そのため、「留学生」や「家族滞在で生活をしている外国人」などをを雇用する場合は、必ず「資格外活動の許可」を受けているかどうかの確認を忘れてはいけません。
また、雇用保険の被保険者にならないような「短期のアルバイト」で雇用した場合などで、届出期限前に離職したようなケースでは、「外国人雇用状況の届出書」において、雇入日と離職日の両方を記入して、まとめて届出る方法をとることもできます。
「資格外活動の許可」については、以下の記事で詳しく解説をしています。↓
・資格外活動って何?留学生をアルバイトで雇用する時の注意点
外国人派遣労働者の場合
外国人派遣労働者についても、「外国人雇用状況の届出」対象になりますので、届出を行う必要があります。
この場合の届出を行う事業主は、「派遣先」ではなく「派遣元」になります。
また、「登録型派遣」の場合は、派遣先が確定し雇用関係が生じた都度に、雇入れの届出を行う必要がありますので、注意が必要です。
雇用契約を締結しない場合
例えば、「ダンサー」「歌手」「プロスポーツ選手」「楽器演奏者」など個別に雇用契約を締結しないケースも考えられます。
そのようなケースでは、労働者性の有無で判断され、「使用従属性」が認められる場合には、雇用契約を締結していない場合でも、労働者に該当し、「外国人雇用状況の届出」が必要になります。
使用従属性の判断基準について
使用従属性の判断基準は、以下のように考えられます。
使用従属性に関する判断基準
(1)指揮監督下の労働
イ 仕事の依頼、業務に従事すべき旨の指示等に対する諾否の自由の有無
ロ 業務遂行上の指揮監督の有無
ハ 拘束性の有無
ニ 代替性の有無
(2)報酬の労務対償性
労働者性の判断を補強する要素
(1)事業者性の有無
イ 機械、器具、衣装等の負担関係
ロ 報酬の額
(2)専属性の程度
が判断基準になります。
「外国人雇用状況の届出」が必要かどうかについては、厚生労働省のホームページでもQ&A方式で掲載されていますので、参考にしてください。
・厚生労働省 外国人雇用状況届出 Q&A
外国人雇用状況の届出内容は?
「外国人雇用状況の届出」の内容は、上述した「雇用対策法28条」と「雇用対策法施行規則第10条」で根拠が記載されています。
以下、「雇用対策法施行規則第10条」です。
雇用対策法第10条
一 生年月日
二 性別
三 国籍の属する国又は出入国管理及び難民認定法第二条第五号ロに規定する地域
四 出入国管理及び難民認定法第十九条第二項前段の許可(以下「資格外活動の許可」という。)を受けている者にあつては、当該許可を受けていること。
五 住所
六 雇入れ又は離職に係る事業所の名称及び所在地
七 賃金その他の雇用状況に関する事項
と規定されています。
つまり、上記の事項に加えて、「氏名」「在留資格」(雇用対策法28条)が届出の内容になります。
以下に、厚生労働省から発表されている「外国人雇用状況の届出書」の見本を掲載しておきます。↓
外国人雇用状況の届出をしなかったらどうなるの?
外国人雇用状況の届出をしなかった場合は、「雇用対策法第40条1項2号」で罰則規定が設けられています。
雇用対策法第40条
第四十条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 第二十七条第一項の規定に違反して届出をせず、又は虚偽の届出をした者
二 第二十八条第一項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
三 第三十四条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは虚偽の陳述をし、若しくは同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
つまり、「外国人雇用状況の届出」を行わなかったり、嘘をついて届出をした場合は、30万円以下の罰金に処せられるということです。
外国人雇用状況の届出方法について
「外国人雇用状況の届出」は、雇用保険に加入しているかどうかで届出の方法が異なります。
事業主が外国人を雇用した時は、
・外国人雇用状況の届出
を忘れずに行う必要があります。これは、雇用保険に加入するかどうかで届出方法が少し異なりますので、注意が必要です。
— ひーくん@外国人ビザの専門家 (@coolwork3) January 8, 2019
雇用保険に加入する場合は、以下見本に掲載している「雇用保険被保険者資格取得届」の「17〜22」欄を記載して届出をすることによって、外国人雇用状況の雇入れの届出を行ったこ とになります。
【参照:厚生労働省のホームページ】
また、雇用保険に加入している被保険者が離職する場合も同様に、以下見本に掲載している、「雇用保険被保険者資格喪失届」の「14〜18」欄を記載して、届出を行うことによって、外国人雇用状況の離職の届出を行ったことになります。
【参照:厚生労働省のホームページ】
ちなみに雇用保険に加入しない場合は、「外国人雇用状況の届出」が必要になります。
在留カードやパスポートを確認すること
「外国人雇用状況の届出」を行う際には必ず「在留カード」や「パスポート」を確認することを忘れてはいけません。
「在留カード」や「パスポート」を確認することで、届出事項である「氏名」「在留資格」「在留期間」「生年月日」「性別」「国籍・地域」「資格外活動の許可の有無」などがわかりますので、間違えて届出をしてしまわないように、必ず確認をすることが求められます。
在留カードについては、以下の記事で詳しく解説をしています。↓
・外国人の在留カードについてわかりやすく解説します!
また、以下に厚生労働省から発表されている在留カードの確認事項についても掲載しておきます。↓
参照:厚生労働省 ホームページ
まとめ
今回は、「外国人雇用状況の届出」について書いていきました。
就労ビザを持っているからといって、安心して大切な届出を忘れないように雇用する側は気をつける必要があります。
また、在留カードなどもしっかりと確認して、間違えて届出をしないように注意して、採用をすることが求められます。
今回の記事が皆様の参考になれば幸いです。
外国人の雇用については、以下の記事も参考にしてください。↓