外国人の日本語教育についての法律である「日本語教育推進法」が参議院本会議において、全会一致で可決、成立しました。
「日本語教育推進法」では、日本語教育における国と地方公共団体の責務等を定めることで、活力ある社会の実現を目指していくことが考えられています。
そこで、今回は、「日本語教育推進法」について考えていきたいと思います。
皆様の参考になれば幸いです。
その他、外国人に対する日本の取り組みについては、以下の記事でも解説しています。↓
・観光立国実現に向け外国人に対する日本の取り組みについて
日本語教育推進法とは?
「日本語教育推進法」は「日本語教育の推進に関する法律」を短縮した形です。
「金融商品取引法」を「金商法」と省略して呼ぶのと同じようなイメージです。
外国人の方の日本語教育について「日本語教育推進法」が可決されました。
この法律では
・基本理念
・国の責務等
・基本方針等
・基本施策
などについて規定されています。— ひーくん@外国人ビザの専門家 (@coolwork3) 2019年6月22日
この「日本語教育推進法」は、
外国人に対する日本語教育を推進することで、
・日本に居住する外国人が日常生活及び社会生活を国民と共に円滑に営むことが環境を整備すること。
・日本に対する諸外国の理解と関心を深める上で重要であること。
上記2点の事項について鑑み、多様な文化を尊重した活力ある共生社会の実現に資するとともに、諸外国との交流の促進並びに友好関係の維持及び発展に寄与することを目的とされています。
以下、衆議院のホームページから「日本語教育推進法案」の目的条文です。↓
日本語教育推進法(目的)
第一条(目的)
この法律は、日本語教育の推進が、我が国に居住する外国人が日常生活及び社会生活を国民と共に円滑に営むことができる環境の整備に資するとともに、我が国に対する諸外国の理解と関心を深める上で重要であることに鑑み、日本語教育の推進に関し、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体及び事業主の責務を明らかにするとともに、基本方針の策定その他日本語教育の推進に関する施策の基本となる事項を定めることにより、日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進し、もって多様な文化を尊重した活力ある共生社会の実現に資するとともに、諸外国との交流の促進並びに友好関係の維持及び発展に寄与することを目的とする。
日本語教育推進法における外国人と日本語教育とは?
「日本語教育推進法」では、「外国人等」と「日本語教育」について以下のように定義しています。
外国人等とは
「日本語教育推進法」における「外国人等」とは、
・日本語に通じない外国人及び日本の国籍を有する者
と定義されています。
つまり、日本国籍を持っていたとしても、日本語が通じない場合は、この法律では外国人として定義されます。
日本語教育とは
「日本語教育推進法」における「日本語教育」とは、
・外国人等が日本語を習得するために行われる教育その他の活動(外国人等に対して行われる日本語の普及を図るための活動を含む。)
と定義されています。
日本語教育推進法の基本理念について
「日本語教育推進法」では大きく7つの基本理念が定められています。
以下、「日本語教育推進法」から7つの基本理念を抜粋しています。↓
1、日本語教育の推進は、日本語教育を受けることを希望する外国人等に対し、その希望、置かれている状況及び能力に応じた日本語教育を受ける機会が最大限に確保されるよう行われなければならない。
2、日本語教育の推進は、日本語教育の水準の維持向上が図られるよう行われなければならない。
3、日本語教育の推進は、外国人等に係る教育及び労働、出入国管理その他の関連施策並びに外交政策との有機的な連携が図られ、総合的に行われなければならない。
4、日本語教育の推進は、国内における日本語教育が地域の活力の向上に寄与するものであるとの認識の下に行われなければならない。
5、日本語教育の推進は、海外における日本語教育を通じて我が国に対する諸外国の理解と関心を深め、諸外国との交流を促進するとともに、諸外国との友好関係の維持及び発展に寄与することとなるよう行われなければならない。
6、日本語教育の推進は、日本語を学習する意義についての外国人等の理解と関心が深められるように配慮して行われなければならない。
7、日本語教育の推進は、我が国に居住する幼児期及び学齢期(満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから満十五歳に達した日の属する学年の終わりまでの期間をいう。)にある外国人等の家庭における教育等において使用される言語の重要性に配慮して行われなければならない。
上記7つの事項について、「日本語教育推進法」で規定されています。
事業主の責務について
「日本語教育推進法」では、事業主側の責務についても規定されています。
事業主の責務としては、
上述した、基本理念にのっとり、国又は地方公共団体が実施する日本語教育の推進に関する施策に協力するとともに、その雇用する外国人等及びその家族に対する日本語学習(日本語を習得するための学習)の機会の提供その他の日本語学習に関する支援に努めることが規定されています。
事業主が外国人を雇用する場合に知っておきたいことは以下の記事で解説をしています。↓
・外国人を雇用したい!知っておきたいポイントを解説します!
日本国内での日本語教育の機会の拡充について
「日本語教育推進法」では、日本国内での日本語教育の機会の拡充について、大きく6つの事項について規定されています。
1、外国人等である児童、生徒等に対する日本語教育
2、外国人留学生等に対する日本語教育
3、外国人等の被用者等に対する日本語教育
4、難民に対する日本語教育
5、地域における日本語教育
6、日本語教育についての国民の理解と関心の増進
上記6つの事項について規定されています。
海外における日本語教育の機会の拡充について
上記では日本国内における日本語教育の拡充について書きましたが、海外における日本語教育の拡充についても、「日本語教育推進法」で規定されています。
1、海外における外国人等に対する日本語教育
2、海外に在留する邦人の子等に対する日本語教育
上記2点について規定されています。
海外から日本に外国人を呼び寄せる場合に必要な在留資格全般については以下の記事で解説をしています。↓
・外国人の在留資格制度とは?わかりやすく徹底解説します!
日本語教育推進会議等について
「日本語教育推進法」では、
「文部科学省、外務省その他の関係行政機関相互の調整を行うことにより、日本語教育の総合的、一体的かつ効果的な推進を図るため、日本語教育推進会議を設けるものとする。」と規定されています。
まとめ
今回は、「外国人の日本語教育の推進に関する法律」について考えてきました。
今後も日本で生活する外国人が増加することによって、日本語教育の重要性がとても大きくなると考えられます。
「日本語教育機関における日本語教育の水準の維持向上のための評価制度等の在り方」等、まだまだ検討事項はありますが、今回の法律が成立したことによって、日本で生活している外国人の方にとって、より良い日本語教育が提供することができるようになれば素晴らしいことです。
今回の記事が皆様の参考になれば幸いです。
その他、日本で生活している外国人の手続き等については以下の記事で解説しています。↓