外国人留学生の日本料理海外普及人材育成事業(和食)を解説

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日本食や食文化を海外に普及させるために、日本料理海外普及人材育成事業という制度が農林水産省で実施されています。

この制度を利用することで、指定された日本料理(和食)専門店等で最長5年間「特定活動」ビザで、日本に滞在することが可能になります。

そこで、今回は、この「日本料理海外普及人材育成事業」について考えていきます。

皆様の参考になれば幸いです。

外国人留学生を新卒で採用しようと検討している方は、以下の記事も参考にしてください。↓
外国人留学生を新卒で採用したい!注意すべきことについて

日本料理海外普及人材育成事業とは?

日本料理海外普及人材育成事業とは?

日本食及び食文化の海外への普及を促進するために、日本料理を学んだ留学生に出入国管理上の特例措置を講じるものです。

このことによって、調理師専門学校等に通う外国人留学生は、最長5年間の在留期間延長が認められ、卒業後も「日本料理店等」で修業することが可能になります。

つまり、日本料理を学んだ外国人留学生が、母国に戻った時に、日本食の良さを正しく伝えてもらうことに期待して、日本食専門店で修行がすることができるようになるということです。

「日本料理海外普及人材育成事業」を利用しない場合は、通常「技能」ビザを取得して、外国人調理師を雇用することになります。

以下の、記事で「技能」ビザについて詳しく解説をしています。↓
外国人の料理人を雇用したい!技能ビザについて徹底解説!

和食がユネスコ無形文化遺産に登録

和食が「ユネスコ無形文化遺産」に登録されたことなども影響してか、海外の日本食レストランの数も多くなっています。

農林水産省が発表している2017年のデータでは、 海外の日本食レストランの数は約11.8万店と発表されており、2015年の約8.9万店と比較すると3割増となっています。

海外の日本食レストランの数

<参照:農林水産省 海外日本食レストラン数の調査結果の公表について>

しかし、海外に日本食レストランが普及しているものの、日本食の文化が正しく普及されていないということも指摘されています。

そのようなこと現状の中、日本食の技術や知識、衛生管理等を学んだ外国人料理人を増やすことなども必要であり、さらに日本食文化や知識を海外に促進していくために、「日本料理海外普及人材育成事業」が必要とされました。

以下、日本料理海外普及人材育成事業実施容量のスキームです。↓

日本料理海外普及人材育成事業実施容量のスキーム

<参照:農林水産省 日本料理海外普及人材育成事業について>

人材育成の対象となる日本料理は?

人材育成の対象となる日本料理は?

「日本料理海外普及人材育成事業」の対象となる日本料理店は、日本標準産業分類における以下のものになります。

・日本料理店(細分類番号 7621)

・料亭(細 分類番号 7622)

・そば、うどん店(細分類番号 7631)

・すし店(細分類番号 7641)

・お好み焼、焼きそば、たこ焼き店(細分類番号 7692)

・他に分類されないその他の飲食店(細分類番号 7699)

等に該当する事業所で提供される料理又は飲食料品であって、 日本食及び食文化の海外普及に寄与すると認められるものが該当します。

<参照:日本標準産業分類>

※追記

2019年11月に日本料理海外普及人材育成事業実施要領の一部が改正され、上記以外にも対象分野が拡充されました。

改正された内容に大枠については、以下の記事でも書いています。↓
日本の食文化海外普及人材育成事業について解説!

留学生が外国人調理師として日本料理を修行するための条件は?

留学生が外国人調理師として日本料理を修行するための条件は?

外国人留学生が、調理師専門学校等を卒業してから、日本食料理店で雇用されるためには、以下の条件を満たしていることが必要です。

1、取組実施機関において日本料理の調理の業務に従事する調理師たるに必要な知識及び技能を修得し、成績優秀かつ素行が善良であること。

2、日本料理の知識及び技能を高めようとする意思、及び帰国後、日本食及び食文化を世界へ発信する意思を有すること。

3、特定日本料理調理活動への従事を開始する時点で満 18 歳以上であること。

などの条件を満たす必要があります。

取組実施機関とは

上記で出てきた、取組実施機関とは、調理師法第3条第1項第1号 の規定による厚生労働大臣又は都道府県知事の指定を受けた調理師養成施設のうち、 次の要件を全て満たし、日本料理海外普及人材育成事業により日本食及び食文化の海外普及の人材育成に必要な事務を実施するものをいいます。

1、「日本料理海外普及人材育成事業」に係る実習計画の策定及び実習計画に基づく活動の実施に必要な事務を行う人員が確保されていること。

2、健全かつ安定的な経営状況であると認められること。

3、職業安定法に基づく職業紹介の許可を受けていること又は届出を行っていること。

などの条件を満たしている、調理師専門学校等が該当します。

つまり、外国人留学生であれば、誰でも日本食料理店で働くことができるという訳ではありませんので、注意が必要です。

受入れ機関とは

「日本料理海外普及人材育成事業」を考えるにあたって、「受入れ機関」というワードも出てきます。

この「受入れ機関」とは、

以下に記載する要件を全て満たす日本の公私の機関であって、外国人調理師を雇用契約に基づく労働者として受け入れ、日本料理の調理に係る業務に従事させ、上述した「取組実施機関」と連携して当該外国人調理師に専門的な知識及び技能を修得させるものをいいます。

つまり、「受入れ機関」とは、日本料理店等の外国人留学生を受け入れる側の企業になります。

要件

・外国人調理師が日本料理の知識及び技能を修得するため、実習計画を適切に実施 できる事業所を有していると認められること。

・健全かつ安定的な経営状況であると認められること。

・ 労働関係法令及び社会保険関係法令を遵守していること。

・ 過去三年間に外国人の受入れ又は就労に係る不正行為を行ったことがないこと。

などの要件を満たしておく必要があります。

実習計画を作成する必要がある

実習計画を作成する必要がある

上述した、「取組実施機関」及び「受入機関」は共同で、外国人調理師の日本料理の知識及び技能の修得に係る実習計画を策定し、受入機関ごとに、農林水産省に申請し、認定を受ける必要があります。

実習計画に必要な事項は以下の通りです。

・日本料理の知識及び技能を修得するための計画及び施設に関する事項

・日本料理の知識及び技能に係る修得状況の評価に関する事項

・ 在留中の住居の確保に関する事項

・外国人調理師が母国に一時帰国可能な程度の休暇の取得に関する事項

・日本料理の指導員及び生活指導員の任命に関する事項

・報酬及び労働・社会保険への加入等を担保する財産的基盤に関する事項

・ 外国人調理師との面接及び外国人調理師からの生活・労働等に係る相談への対応 (苦情処理を含む。)並びに監査の実施に関する事項

・外国人調理師の帰国旅費の確保その他の帰国担保措置に関する事項

・特定日本料理調理活動の継続が不可能となった場合の措置に関する事項

上記の事項などを盛り込んだ実習計画を作成し、「一定の要件」を満たしている場合は、農林水産省からの認定を受けることができます。

農林水産省から認定を受けるための一定の要件とは?

農林水産省から認定を受けるための一定の要件とは?

上述した、実習計画を作成し、農林水産省から認定を受けるための一定の要件とは、以下の通りです。

・ 計画の内容が期間全体を通じて効果的な日本料理の調理技能の向上が図られることが確実と認められること。

・調理師の調理技能を必要としない業務又は同一の作業の反復のみによって修得できる調理業務に従事させるものでないこと。

・日本料理の知識及び技能に係る修得状況の評価について、その実施体制、方法、実施項目等が適切であると認められること。

・ 日本料理の知識及び技能を修得するための期間を五年以内としていること。

・特定日本料理調理活動を行う外国人調理師の受入れを行う事業所が明確となっ ており、受入れ人数を一事業所当たり二人以内としていること。

・ 外国人調理師が、特定日本料理調理活動に日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。

・外国人調理師が取組実施期間中において、取組実施機関、受入機関から保証金などを徴収されないこと及び労働契約の不履行に係る違約金を定める契約等が締結さ れていないこと。

・ 取組実施機関が、監査を継続的に実施できる能力及び体制を確保し ていること。

などの要件を満たしていれば、農林水産省からの認定を受けることができるようになります。

つまり、日本料理等の技術の取得ができないような、皿洗いやホールスタッフ業務だけでは当然受け入れることはできません。

また、給与についても日本人の従業員が受ける金額と同等以上であることが求められますので、不当に不利な条件で雇用させることはできません。

日本料理店等が受入れを行う場合は

日本料理店等が受入れを行う場合は

日本料理店等の受入れ機関が、外国人留学生を受けるためには、「受入機関(留学生の受け入れ先の日本料理店等)」と「取組実施機関=調理師学校」が協力して行う必要があります。

そのため、「日本料理海外普及人材育成事業」を利用して留学生の受け入れる場合は、調理師学校の団体である全国調理師養成施設協会に確認をして、紹介等をしてもらう必要があります。

まとめ

外国人留学生の「日本料理海外普及人材育成事業」制度のまとめ

今回は、日本食(和食)等を学んだ外国人留学生の「日本料理海外普及人材育成事業」制度について考えてきました。

和食が、ユネスコ無形文化遺産に登録されたことによって、日本食などの日本の食文化や料理なども日本の良さを海外にアピールするための大きな武器になります。

外国人留学生に日本食について、正しい知識を持ってもらうことで、日本の良さが多くの外国人に伝わることができれば、とても喜ばしいことですね。

今回の記事が皆様の参考になれば幸いです。

外国人の在留資格全般については、以下の記事で解説をしていますので、参考にしてください。↓

外国人の在留資格制度とは?わかりやすく徹底解説します!

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