外国人が日本の会社に雇用されて働きにくる場合は、就労ビザを取得して来ることになります。
その在留資格の1つに「技術・人文知識・国際業務」という在留資格があります。
今回は、この「技術・人文知識・国際業務」の在留資格について徹底的に解説をしていきます。
皆様の参考になれば幸いです。
在留資格全般については、以下の記事も参考にしてください。↓
・外国人の在留資格制度とは?わかりやすく解説します!
在留資格「技術・人文知識・国際業務」とは?
日本の会社で働く外国人の多くが取得する、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格ですが、実務上は「技・人・国」(ギジンコク)とそれぞれの頭の部分を取って呼ぶことが多いです。
この「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、一言でまとめるとサラリーマンなどのように企業と雇用契約を締結して、働く外国人が取得する在留資格になります。
「技術・人文知識・国際業務」という名称の通り、それぞれ3つに分類することができます。
技術とは?
技術とは、法務省のホームページでは、「理学,工学その他の自然科学の分野」であると記載されています。
つまり、システムエンジニア・プログラマー・機械系エンジニア・電気系エンジニアなどの業務が想定されます。
主に理系の職種が該当することになります。
技術の許可事例
技術の業務の許可事例としては、例えば
・給与(月額)23万円で雇用され、電機製品の製造を業務内容とする企業において、技術開発業務に従事。(大学卒業。工学部)などがあります。
人文知識とは?
人文知識とは、「法律学,経済学,社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務」と記載されています。
つまり、主に文系の業務になりますが、例えば「営業・企画・広報宣伝・経理などの事務職」を行う業務が想定されています。
人文知識の許可事例
人文知識での許可事例としては、例えば
・給与(月額)19万円で雇用され、法律事務所において、弁護士補助業務に従事。(大学卒業・法学部)などがあります。
国際業務とは?
国際業務とは、「外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動」と記載されています。
つまり、「通訳・翻訳・語学学校の教師・デザイナー」などを行う業務が想定されています。
国際業務の許可事例
国際業務の許可事例としては、例えば、
・給与(月額)17万円で雇用され、語学指導を業務内容とする企業において、英会話講師業務に従事。(大学卒業・教育学部)などがあります。
技術・人文知識・国際業務の典型例について
上述した通り、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、1つの在留資格で、3つの意味を持っています。
そのため、外国人を雇用する企業にとっても、その外国人が本当に「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当するのか?ということの見極めが難しくなります。
そのため、法務省のホームページでも典型例が掲載されていますので、そちらも参考にしてみてください。↓
・法務省「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について
技術・人文知識・国際業務の在留資格を取得するためのポイント
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、外国人なら誰でも取得できるという訳ではありません。
しっかりと条件を確認してから、在留資格の申請をしなければ、「不許可」になってしまうケースが多くあります。
そこで、以下に「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得するための大切なポイントについて書いていきます。
①職務内容と大学で専攻していた科目との関連性
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、外国人に専門知識を持っていることが必要となります。
そのため、大学や専門学校などで雇用される会社の業務に必要となる専門知識を学んでいることが必要になります。
つまり、「機械系エンジニアなどの技術職」で外国人を雇用する場合は、その職務内容が卒業した大学や専門学校で勉強した内容を活かすことができることが必要になります。
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を申請する場合は、外国人の「単位履修表」などを添付して、いかに仕事内容と大学等で学んだ内容との関連性があるか。ということを立証していくことが大切になります。
単純労働は認められない
上述した通り、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、専門知識が必要な業務を行うことが前提です。
そのため、誰でもできるような単純労働は認められません。
例えば、「荷物の運搬やビルの清掃作業」などでは、「技術・人文知識・国際業務」を取得することは難しくなります。
また、一般的に、求人の際の採用基準に「未経験可、すぐに慣れます。」と記載のあるような業務内容であれば、当然「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得することは困難になります。
「履修内容と職務内容との間に関連性が認められない」とされた不許可事例
・給与(月額)20万円で、コンピューター関連サービスを業務内容とする企業において、外国人客からの相談対応、通訳や翻訳に関する業務に従事。(専門学校卒業・専門士)
・給与(月額)20万円で、弁当の製造・販売業務を行っている企業において、現場作業員として 採用され、弁当加工工場において弁当の箱詰め作業に従事。(大学卒業・教育学部)
上記事例は、大学や専門学校で学んだ履修科目と、職務内容との関連性が認められず、不許可とされています。
②外国人の学歴と職歴
大学等を卒業している場合は、上述した通り「履修内容と職務内容との関連性」が認めらることができれば、実務経験は必要なく、「学歴」だけで「技術・人文知識・国際業務」の申請をすることができる可能性があります。
しかし、「高卒」の場合など「学歴がない」外国人のケースでは、「10年もしくは3年」の実務経験が求められます。
3年の実務経験で大丈夫なもの
3年の実務経験が求められるものは、
例えば、「通訳・翻訳・語学教師」などがあります。
10年の実務経験で大丈夫なもの
基本的には、上記で記載した「3年の実務経験で大丈夫なもの」以外は、10年の実務経験が必要になります。
実務経験の立証は難しいことが多い
実務経験は、過去に外国人が勤務していた会社から「在職証明書」などを発行してもらい、立証していくことになります。
しかし、実務上は「過去の勤務先と連絡が取れない」「過去の勤務先が在職証明書を発行してくれない。」など、様々な理由で10年の実務経験を立証することが難しい状況です。
また、中には「在職証明書」を偽造してくる外国人も存在していますので、実務経験を立証する時は、注意しなければなりません。
つまり、実務経験を証明する書類を提出できない=「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は申請できないということになります。
③会社と外国人との間に雇用契約があること
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を申請する際には、「雇用契約書」の提出が求められます。
つまり、事前に外国人と「雇用契約」を締結した文書を提出することによって、既に就職が決まっていることを証明していくことになります。
④日本人と同等の給与水準
日本人と外国人の給与に違いを設けることによって、外国人に対する不当な差別を禁止しようという考えがあります。
そのため、会社側は日本人の従業員に支払っている給与と同等の給与を支払うことが求められます。
また、上記③の「雇用契約書」にも当然、月額の給与等がわかるように明示する必要があります。
報酬が日本人と同等ではないとされた不許可事例
・給与(月額)13,5万円で、「コンピューター関連サービスを業務内容とする企業において、 エンジニア業務に従事」していたとされる事例では、「申請人と同時に採用され、同種の業務に従事する新卒の日本人の報酬が 月額18万円であることが判明した。」として、同等の給与水準ではないとされ、不許可とされています。
⑤会社の経営状態の安定性
上記①〜④を満たしていたとしても、雇用する会社の経営状態が悪ければ、雇用予定の外国人に対して、給与を支払うことができなくなるのでは。と判断されることがあります。
そのため、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を申請する場合は、会社の経営状態が安定していることが必要になります。
ただし、赤字であったとしても、事業計画等を提出することによって、将来的には黒字化に転じると、説明をすることができれば、赤字であっても許可が決定される可能性があります。
また、新設法人の場合は、決算書などの経営状態を示すものを提出することができないので、「事業計画書」等を作成して、経営状況の見通しを示すことができれば、申請をすることができます。
⑥外国人を雇用する必要性(会社の規模)
上記全ての条件を満たしていたとしても、その外国人を雇用する必要性がないと判断されると不許可になってしまいます。
つまり、業務量や従業員数などの事情を考慮して、その外国人を雇用しなくても事業として問題なく業務を行うことができると判断されると厳しい状況になります。
業務量が不十分(雇用する必要性がない)と判断された不許可事例
給与(月額)22万円で、人材派遣及び物流を業務内容とする企業にお いて、商品仕分けを行う留学生のアルバイトが 作業する場所を巡回しながら通訳業務に従事していた。」という事例では、「具体的な職務内容は、自らも商品仕分けのシフトに入り、9名のア ルバイトに対して指示や注意喚起を通訳するというものであり、 商品仕分けを行うアルバイトに対する通訳の業務量が十分にあるとは認められない。」と判断され不許可になっています。
⑦外国人の素行について
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を申請する外国人が、過去に警察などに捕まる等の素行に問題があれば、在留資格を申請しても不許可になってしまいます。
そのため、雇用する会社側は、その外国人からヒアリングを行い、しっかりと話し合う必要があります。
素行に問題があるとして不許可になった事例
給与(月額)20万円で、「貿易業務・海外業務を行っている企業において、海外取引業務に従事するとされていた事例です。
この件では、「申請人が「留学」の在留資格で在留中に1年以上継続して月200時間 以上アルバイトとして稼働していたことが明らかとなった。 (資格外活動許可の範囲を大きく超えて稼働していたことから、 その在留状況が良好であるとは認められない。)」として、不許可になっています。
法務省から発表されている不許可事例の一覧
以下に、上記不許可事例を記載するにあたって、参考にした法務省から発表されている不許可事例の一覧をURLを載せておきますので、参考にしてください。↓
留学生・「技術・人文知識・国際業務」への変更許可/不許可事例 入国管理局
就労ビザはという在留資格はない
こちらは、よく勘違いされている方が多いのですが、就労ビザという名前のビザは存在していません。
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、就労ビザの1つであって、就労ビザには「経営・管理」「技能」「企業内転筋」などの在留資格などがあります。
そのため、就労ビザとはそれらの在留資格の総称ということになりますので、「就労ビザ」=「技術・人文知識・国際業務」という訳ではありませんので、注意が必要です。
派遣社員やフリーランスで「技術・人文知識・国際業務」は取得できる?
正社員雇用よりも、難易度はあがりますが「契約」には,雇用のほか、委任、委託、嘱託等が含まれますが「派遣社員」や「フリーランス」でも「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は取得が可能です。
ただし、いずれの場合も特定の機関との継続的な契約でなければなりません。
派遣社員の場合
派遣社員の場合は、上記要件を満たしていることが前提ですが、「派遣先」の職務内容との関連も見られます。
また、「派遣元」の会社との契約期間や給与額・派遣元の財務状況なども審査されますので、注意が必要です。
フリーランスの場合
フリーランスの場合は、仕事の契約期間や契約金額・複数社と契約しているなどが認められれば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得することができます。
しかし、個人事業主となりますので、「経営・管理」の在留資格に該当する可能性もあります。
そのため個人事業主(フリーランス)で「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得することはかなり難易度が高くなります。
まとめ
今回は、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格について解説をしてきました。
「技術・人文知識・国際業務」は転職する場合なども、上記で記載したような条件を見られますので、会社側も外国人側もしっかりとした知識を持っていることが大切です。
今回の記事が皆様の参考になれば幸いです。
転職する場合は、以下の記事も参考にしてください。↓
・就労資格証明書とは?外国人の雇用時に知っておきたいこと