「外国人技能実習生」というワードは、ニュース等で聞いたことがある方も多いと思います。
2017年11月に技能実習に関する法律として、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」が施行され、新しく技能実習制度が生まれ変わりました。
そこで、今回は「技能実習制度」について解説をしていきます。
皆様の参考になれば幸いです。
外国人の技能実習制度とは?
外国人の技能実習制度とは、「開発途上地域等への技能等の移転を図り、その経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的とする制度です。
つまり、技能実習制度とは、開発途上国の外国人実習生に日本の技術等を学んでもらい、そこで得た知識や技術をを母国に帰った時に役立ててもらう。という考えです。
そのような目的があるため、外国人技能実習生に対して、「労働力の調整として単純労働に従事させることはできません。」
これは、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律第三条」にも規定されています。
外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律第三条
技能実習は、技能等の適正な修得、習熟又は熟達(以下「修得等」という。)のために整備され、かつ、技能実習生が技能実習に専念できるようにその保護を図る体制が確立された環境で行われなければならない。
2 技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない。
技能実習制度の現状は?
技能実習制度は、法務省から発表されているデータによると、2017年末時点では、技能実習生の数は、274,233人 とされています。
※技能実習2号への移行者数は、86,583人
また、受け入れ人数の多い国は、「ベトナム」「中国」「フィリピン」とされています。
企業単独型実習と団体監理型実習がある
外国人の技能実習生を受け入れる方法には2種類に分けることができ、「企業単独型」と「団体監理型」に分類することができます。
企業単独型とは?
企業単独型実習とは、日本の企業が海外の現地法人や合弁企業、取引先企業の常勤職員を直接受け入れるというものです。
2017年末のデータでは、企業単独型で技能実習生を受け入れている企業は、3.6%となる、残りの96.4%は後述する「団体監理型」で技能実習生の受け入れを行っています。
以下、企業単独型実習のイメージです。↓
参照:法務省 新たな技能実習制度の施行状況について
技能実習生を送り出しができる機関の範囲
・日本の公私の機関の外国にある事業所。(支店・子会社・合弁会社など)
・日本の公私の機関と引続き1年以上の国際取引の実績または過去1年間に10億円以上の国際取引の実績を有する機関。
・日本の公私の機関と国際的な業務上の提携を行っていることその他の密接な関係を有する機関として法務大臣及び厚生労働大臣が認めるもの。
上記の企業が技能実習生の送り出しをすることができます。
団体監理型とは?
団体監理型実習とは、非営利の監理団体(事業協同組合,商工会等)が技能実習生を受入れ,傘下の企業等で技能実習を実施するものです。
以下、団体監理型実習のイメージです。↓
参照:法務省 新たな技能実習制度の施行状況について
団体監理型を利用することによって、海外に拠点を持っていない、中小企業なども外国人技能実習生を受け入れることができるようになります。
その結果、上述した通り、多くの割合を「団体監理型」が占めることになります。
参照:法務省 新たな技能実習制度の施行状況について
技能実習ができる職種と作業範囲は?
外国人技能実習生が従事できる職種と作業範囲は、「公益財団法人 国際研修協力機構 JITCO」の「技能実習の職種・作業の範囲について」に詳しく書かれていますので、参考にしてください。↓
「公益財団法人国際研修協力機構 JITCO 技能実習の職種・作業の範囲について」
技能実習の在留資格について
外国人が日本で生活するためには、その在留資格の目的にあった活動をすることが求められます。
そのため、外国人の技能実習生も日本で生活をするためには、「技能実習」の在留資格を取得する必要があります。
在留資格一般については、以下の記事で詳しく解説をしています。↓
・外国人の在留資格制度とは?わかりやすく徹底解説します!
技能実習の在留資格には、「技能実習第1号〜3号」が存在し、それぞれ分類されています。
外国人が技能実習の在留資格には
・技能実習1号
・技能実習2号
・技能実習3号
の3パターンに分類されています。また、「企業単独型」と「団体監理型」でも、
「技能実習1号イ」と「技能実習1号ロ」というように少し名称も変わります。— ひーくん@外国人ビザの専門家 (@coolwork3) January 6, 2019
技能実習1号について
入国後1年目の技能等を習得する活動を「技能実習1号」とされ、原則的に最初の2ヶ月間は座学などの講習を受け、この間は、受け入れ企業との雇用関係はない状態になります。
また、「企業単独型実習」と「団体管理型実習」では、少し名称が異なります。
「企業単独型実習」の場合は、「技能実習1号イ」
「団体管理型実習」の場合は、「技能実習1号ロ」
という名称になります。
技能実習2号について
2・3年目の技能等に習熟するための活動を「技能実習第2号」とされます。
「技能実習2号」も「企業単独型実習」と「団体管理型実習」で、名称が異なります。
「企業単独型実習」の場合は、「技能実習2号イ」
「団体管理型実習」の場合は、「技能実習2号ロ」
となります。
技能実習3号について
4年目・5年目の技能等に熟達する活動を「技能実習3号」とされます。
「技能実習3号」も「企業単独型実習」と「団体管理型実習」で、名称が異なります。
「企業単独型実習」の場合は、「技能実習3号イ」
「団体管理型実習」の場合は、「技能実習3号ロ」
となります。
第2号・3号に移行するためには、一定の条件がある
第1号技能実習から第2号技能実習に移行、また第2号技能実習から第3号技能実習に移行するためには、外国人技能実習生本人が所定の技能評価試験(2号への移行の場合は学科と実技、3号への移行の場合は実技)に合格する必要があります。
また、主務省令で第2号技能実習もしくは第3号技能実習に移行が可能な職種・作業(移行対象職種・作業)は定められているので注意が必要です。
移行対象職種は以下の厚生労働省のホームページを参考にしてください。
・厚生労働省ホームページ
技能実習の流れは?
技能実習の流れは、「技能実習1号」で1年・「技能実習2号」で2年・「技能実習3号」で2年の最長5年間の在留が可能になります。
ただし、「技能実習3号」は「優良な管理団体・実習実施者」に限定されますので、注意が必要です。
以下、「技能実習の流れ」のイメージ図です。↓
参照:法務省 新たな技能実習制度の施行状況について
技能実習計画について
外国人技能実習生を受け入れるためには、技能実習生ごとに「技能実習計画」を作成する必要があります。
そして、作成した「技能実習計画」は、外国人技能実習機構からその「技能実習計画」が適当であるということの認定を受けることが必要になります。
技能実習計画の種類
外国人技能実習生の受け入れ形態については、「企業単独型と団体管理型」の2種類あるということは上述した通りです。
また、技能実習は「第1号〜第3号」の区分があることも上述したました。
これらの、形態や区分に応じて、その都度、申請者(技能実習を行わせようとする者)が計画を作成することが求められます。
申請などの手続きの方法は?
技能実習計画の申請は、申請者の住所地を管轄する機構の地方事務所・支所において行うことになります。
以下、外国人技能実習機構のホームページを参照してください。↓
・外国人技能実習機構 所在地
また、申請に必要な書類についても、外国人技能実習機構のホームページで公表されていますので、参考にしてください。↓
・外国人技能実習機構
外国人技能実習機構とは?
外国人技能実習機構とは、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」を根拠に2017年1月25日に設立登記がされました。
外国人技能実習機構の目的は、
「外国人技能実習機構は、外国人の技能、技術又は知識の修得、習熟又は熟達に関し、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図り、もって人材育成を通じた開発途上地域等への技能等の移転による国際協力を推進することを目的とする。」
とされています。
また、外国人技能実習機構の主な業務は、
・技能実習計画の認定
・実習実施者・監理団体への報告要求、実地検査
・実習実施者の届出の受理
・監理団体の許可に関する調査
・技能実習生に対する相談・援助
・技能実習生に対する転籍の支援
・技能実習に関する調査・研究 等
を主な業務として行っています。
参照:外国人技能実習機構
監理団体とは?
上述した団体監理型で技能実習生を受け入れる(技能実習生と実習実施者の雇用契約の成立のあっせんを行うことも含む。)ためには、主務大臣から監理団体の許可を受けることが必要になります。
この監理団体の許可のための事務は後述する、外国人技能実習機構が行うことになります。
監理団体の許可区分について
監理団体の許可には、2つの区分があります。
そのため、どの段階までの技能実習の監理事業を行うのかを確認してから、申請を行うことが大切になります。
①特定監理事業
技能実習1号・技能実習2号までをの技能実習を監理することができます。
また、許可の有効期間は3年又は5年です。(5年は前回許可期間内に改善命令や業務停止命令を受けていない場合)
②一般監理事業
技能実習1号・技能実習2号・技能実習3号までの技能実習を監理することができます。
また、また、許可の有効期間は5年又は7年です。(7年は前回許可期間内に改善命令や業務停止命令を受けていない場合)
監理団体の許可基準について
監理団体の主な許可基準は、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律第23条・25条」に根拠が規定されています。
以下、簡単に許可基準を記載します。
監理団体の許可基準
①営利を目的としない法人であること
商工会議所・商工会・中小企業団体・職業訓練法人・農業協同組合・漁業協同組合・公益社団法人・公益財団法人等
②監理団体の業務の実施基準にしたがって事業を適正に行うに足りる能力を有すること
・実習実施者に対する定期監査
・第1号の技能実習生に対する入国後講習の実施
・技能実習計画の作成指導
・技能実習生からの相談対応(技能実習生からの操舵にに適切に応じ、助言・指導その他の必要な措置を実施)
など
③監理事業を健全に遂行するに足りる財産的基礎を有すること
④個人情報の適正な管理のため必要な措置を講じていること
⑤外部役員又は外部監査の措置を実施していること
⑥基準を満たす外国の送出機関と、技能実習生の取次に係る契約を締結していること
⑦優良要件への適合(第3号技能実習の実習管理を行う場合)
⑧上記①〜⑦のほか、管理事業を適正に遂行する能力を保持していること
・自己の名義をもって、他人に管理事業を行わせてはならないこと。
・適切な監理責任者が事業所ごとに選任されていること。
・監理費は、適正な種類及び額の監理費をあらかじめ用途及び金額を明示した上で徴収。
などの要件を満たす必要があります。
また、⑦で記載したように、第3号技能実習の実習監理を行う場合は、「優良監理団体(一般監理事業)」の要件も満たす必要があるので、注意が必要です。
以下の図を参考にしてください。↓
参照:優良な監理団体の要件
技能実習生に対する禁止事項
「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」は、その名称の通り、「技能実習生の保護」についての規定も存在しています。
「技能実習生を守るため」に上記法律の第46条〜48条に、外国人技能実習生に対する禁止事項が設けられています。
以下、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律第46条〜48条」の一部を抜粋して記載しておきます。
外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律第46条〜48条(禁止事項)
①暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、技能実習生の意思に反して技能実習を強制してはならない。
②実習監理者等は、技能実習生等(技能実習生又は技能実習生になろうとする者をいう)又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他技能実習生等と社会生活において密接な関係を有する者との間で、技能実習に係る契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
③実習監理者等は、技能実習生等に技能実習に係る契約に付随して貯蓄の契約をさせ、又は技能実習生等との間で貯蓄金を管理する契約をしてはならない。
④技能実習を行わせる者若しくは実習監理者又はこれらの役員若しくは職員は、技能実習生の旅券又は在留カード(入管法第十九条の三に規定する在留カードをいう。同号において同じ。)を保管してはならない。
⑤技能実習関係者は、技能実習生の外出その他の私生活の自由を不当に制限してはならない。
技能実習から特定技能ビザに移行することも
技能実習を修了した外国人は、2019年4月から新設される「特定技能」ビザに移行することができるとされています。
「特定技能」ビザについては以下の記事で詳しく解説をしています。↓
・外国人の「特定技能」の在留資格について徹底解説します!
技能実習生に係る事件について
技能実習生に係る事件がニュースでも報道されることがあります。
外国人技能実習生を不法にあっせんしたり、不法就労させたりする等を行った場合は、処罰の対象になります。
また、技能実習生自身も法律に違反することを行った場合も当然処罰の対象になりますので、法令をしっかり遵守することが求められます。
以下にニュースになった事件を2つ書きます。
①2013年の広島県カキ養殖会社の事件
広島県のカキ養殖会社で中国人技能実習生に8人が襲われ2人が死亡した事件がありました。
犯行の動機は「自由がなかった。」と供述をしていたということです。
②2016年不法就労あっせんの事件
中国籍の男3人が技能実習生の2人を指定された実習先ではない工場で働かせたとして、出入国管理及び難民認定法違反の疑いで逮捕されました。
まとめ
今回は、外国人の技能実習制度について書いてきました。
技能実習制度の目的は、「開発途上地域等への技能等の移転を図り、その経済発展を担う「人づくり」に協力すること」です。
実習生を受け入れる企業もその意識をしっかりともって、コンプライアンスを遵守し、適正な運営を行っていくことが求められます。
今回の記事が皆様の参考になれば幸いです。
2019年4月から新しい在留資格「特定技能」が新設されます。
以下の記事で詳しく解説をしていますので、参考にしてください。↓