2019年4月に新しい在留資格「特定技能」が新設され、日本に在留する外国人を取り巻く状況がますます多様化されてきています。
そのような状況において、不法就労等外国人が日本の「労働市場」や「治安」など様々な分野に影響を及ぼす懸念があります。
そして、今後も日本に来る外国人の増加が見込まれていることから、
「警察庁」・「法務省」・「厚生労働省」及び法務省の外局として設置された「出入国在留管理庁」が「不法就労等外国人対策の推進」を策定しました。
そこで、今回は「不法就労等外国人対策の推進」について考えていきたいと思います。
皆様の参考になれば幸いです。
不法就労の外国人を雇用しないように注意すべきことについては、以下の記事で解説をしています。↓
・罪に問われる?!不法就労の外国人を雇わないために
不法就労等外国人の現状について
2019年1月時点で法務省から発表されているデータでは、外国人不法残留者数は、約7万4000人と発表されており、5年連続で増加しています。
以下、法務省から発表されているデータからの抜粋です。↓
また、在留資格別の不法残留者数では、「短期滞在」の在留資格での不法残留者の数が引き続きトップになっています。
<参照:法務省 本邦における不法残留者数についてより>
不法就労等外国人の問題について
近年では、不法残留する手口も悪質・巧妙化してきており、不法就労等外国人を巡る問題は、ニュース等でも良く取り上げられ、大きな問題になっています。
例えば以下のような問題があります。
・表面上は正規の在留資格を有するものの、その実態は在留資格に応じた活動を行うことなく、専ら単純労働に従事するなど、偽装滞在して就労するケース
・実際には条約上の難民に該当する事情がないにもかかわらず、「濫用・誤用的」に難民認定申請を行い、就労するケース
・技能実習生が、技能実習先から失踪して、他所で就労するケース
・留学生が、中途退学処分を受けた後も帰国することなく残った在留期間を利用 して、就労するケース
・偽変造の在留カード等を行使して、就労するケース
など、多様化してきており、日本に在留して、就労するための手口が年々、悪質になり、巧妙化してきている現状になっています。
そのような状況の中で、「世界一安全な国、日本」を創り上げることを目指している日本において、不法就労事犯に対する厳正な取締りを強化するとともに,不法就労防止のための広報・啓発を推進することとされています。
在留カードについては、以下の記事で詳しく解説をしています。↓
・外国人の在留カードについてわかりやすく解説します!
不法就労等外国人対策の具体的内容は?
上述したとおり、不法就労外国人対策を進めている日本では、以下のような対策を行なっています。
不法就労等の撲滅に向けた取り締まり
1、警察及び入管局による不法就労助長事犯(悪質な雇用主、あっせんブローカー等)の取 締り強化並びに労働局による不法就労助長行為事業主に対する労働者派遣事業又は職業紹介事業の許可取消し処分に向けた警察及び入管局との連携強化
2、警察及び入管局による不法就労事犯(偽造在留カード行使等事案、難民認定申請を悪用 した事案等)の取締り強化
3、警察及び入管局による偽装滞在等事犯(偽装結婚事案、虚偽事由届出等事案、ブローカ ー等)の取締り強化
4、不法就労等外国人が関係する労働関係法令違反事犯(強制労働禁止の罪、中間搾取の罪、 無許可職業紹介事業の罪、労働者供給事業禁止の罪等)の取締りに向けた労働局と警察及 び入管局との連携強化
5、警察、入管局及び労働局による人身取引事犯に対する迅速かつ積極的な取締りと外国人 被害者の適切な認知・保護
取締り強化に向けた緊密な情報交換
1、警察、入管局及び労働局による不法就労事犯・不法就労助長事犯取締りのための円滑な 情報共有
2、警察、入管局及び労働局による労働関係法令違反事犯及び人身取引事犯取締りのための 円滑な情報共有
3、警察、入管局及び労働局による上記事犯の犯罪捜査、違反調査等における法令に基づく 照会に対する迅速な対応
4、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 第29条」に基づく厚生労働省から法務省への適切な情報提供と入管局における情報の積極的な活用
不法就労等防止に向けた広報・啓発活動及び指導の積極的実施
1、警察、入管局及び労働局による不法就労防止のための広報・啓発活動の積極的な推進
2、入管局及び労働局による事業主に対する外国人雇用状況届出の履行の徹底と不法就労防 止のための指導の促進
3、警察、入管局及び労働局による不法就労助長行為等の検挙事案等の積極的な広報
などの取り組みを行なっています。
外国人の雇用状況の届出については、以下の記事で解説をしています。↓
・外国人の雇用状況の届出って何?わかりやすく解説します!
政府における不法就労等外国人対策について
その他、不法就労等外国人に対する政府の考え方について、以下に記載していきます。
「世界一安全な日本」創造戦略
平成25年に策定された、「世界一安全な日本」創造戦略では、「不法滞在対策」、「偽装滞在対策」等の推進することが明記され、「不法滞在・偽装滞在者の積極的な摘発を 『 図り、在留資格を取り消すなど、厳格に対応すること」といった内容が記載されています。
<参照:「世界一安全な日本」創造戦略>
人身取引対策行動計画2014
平成26年に策定された、「人身取引対策行動計画2014」では、人身取引等の国際的な組織 犯罪対策として、不法就労事犯に対する厳正な取締りを強化するとともに、不法就労防 止のための広報・啓発を推進する」とされています。
<参照:人身取引対策行動計画2014>
外国人材の 受入れ・共生のための総合的対応策
平成30年に策定された、「外国人材の 受入れ・共生のための総合的対応策」では、不法就労等の防止や不法就労助長事犯等の取締りの推進が定められています。
上記のように不法残留者等、不法就労等外国人に対する取り組みを政府は続けています。
まとめ
今回は、不法就労等外国人に対する対策の推進について考えてきました。
今後も、日本で生活をする外国人は増加していくと考えられていますので、雇用する側も、日本で住む外国人においても、法令を順守していくことが求められます。
今回の記事が皆様の参考になれば幸いです。
外国人の在留資格全般については、以下の記事で解説をしています。↓