2019年4月から「特定技能」ビザという新しい在留資格が新設されます。
「特定技能」ビザは「技術・人文知識・国際業務」など、一般的に「就労ビザ」と言われている在留資格とは異なり、外国人にも単純労働が認められます。
この「特定技能」ビザは、「特定産業分野」において取得できる在留資格になります。
そこで、今回は「特定産業分野」の1つである「飲食料品製造業分野」の「特定技能」ビザについて考えていきます。
今回の記事が皆様の参考になれば幸いです。
「特定技能」ビザ全般については、以下の記事で詳しく解説をしています。↓
・外国人の「特定技能」の在留資格について徹底解説します!
飲食料品製造業分野で「特定技能」の外国人を受け入れる目的
飲食料品製造業分野で「特定技能」の在留資格によって外国人を受け入れる目的・趣旨は、
「飲食料品製造業分野において深刻化する人手不足に対応するため、専門性・技能 を生かした業務に即戦力として従事する外国人を受け入れることで、飲食料品製造業分野の存続・ 発展を図り、もって日本の経済・社会基盤の持続可能性を維持する。」
ことが目的とされています。
飲食料品製造業分野は人手不足
飲食料品製造の業務に従事することができる「特定技能」ビザで外国人を受け入れる一つの理由として、飲食料品製造分野の人手不足をあげることができます。
飲食料品製造業分野における労働力需給の現在の状況は、他の製造業と比 べ雇用人員不足感が高い状況になっています。
例えば、
平成29年度の飲食料品製造業分野の有効求人倍率は2.78倍であり、1.54倍である全体より大きいという現状があります。
また、厚生労働省「雇用動向調査」によれば、平成28年度の欠員率が3.0%に達しているとされています。
さらに、日銀短観によれば、「食料品製造業」(中小企業)の雇用人員判断(DI)は、平成29年3月には マイナス30であったものが、平成30年9月にはマイナス41となり、今後の先行きも マイナス46となることが見込まれており、「製造業全般」(中小企業)よりも深刻な 状況であるとされています。
経済産業省「経済センサス」及び「工業統計調査」によれば、平成28年の飲食料 品製造業の従業員数は約140万人であり、また、厚生労働省「雇用動向調査」によれば、平成28年の欠員率は3.0%である。
これら二つの数値を乗じることにより、欠員数は4.3万人と見込まれています。
そのような状況から、平成35年度には、欠員率は5.1%に増加 することが見込まれ、従業員数を横ばいとして、欠員数は7.3万人と推計されています。
飲食料品製造業分野では様々な取り組みも行われている
飲食料品製造業分野では、人手不足の解消のために様々な取り組みが行われています。
①生産性向上のための取組
飲食料品製造業界では、 生産性向上のための取組として、ロボット導入などの設備投資、IoT・AI等を活用した省人化・低コスト化、専門家による工場診断等が進展し始めています。
②国内人材確保のための取組
国内人材の確保に関し、「女性・高齢者」が働きやすい雇用環境の改善や研修・セミ ナーの開催等の取組が業界内で進展し始めています。
また、農林水産省は、女性・高齢者の就業促進のため、「食品産業の働き方改革早わかりハンドブック」の作成・周知を行い、関係者の理解増進を進めています。
<参照:農林水産省 食品産業の働き方改革 早わかりハンドブック>
③処遇改善のための取組
人手不足を踏まえた賃上げ等の処遇改善に関し、経済産業省「工業統計調査」に よると、従業員一人当たりの給与額は増加(平成18年に273万円が平成28年に289万 円まで増加)しているほか、食料品製造業の正社員比率は直近2年間で2.0ポイント 上昇(平成27年度に46%が平成29年度に48%に増加)するなどの成果をあげています。
上記のような取り組みを行い、それでも人手不足が深刻なために、「特定技能」ビザで外国人を受け入れることで、人手不足の解消をしていこうと考えられています。
外国人の受け入れ見込み数は?
飲食料品製造業分野における向こう5年間の受入れ見込数は、最大3万4,000人で あり、これを向こう5年間の受入れの上限として運用されます。
この受け入れ数の根拠は、
「向こう5年間で7万3,000人程度の人手不足が見込まれる中、今回の受入れは、 5年間で2%程度(5年間で2万7,000人程度)の生産性向上及び追加的な国内人材の確保(5年間で1万2,000人程度)を行ってもなお不足すると見込まれる数を上限 として受け入れるものであり、過大な受入れ数とはなっていない。」
というところからきています。
特定技能1号(飲食料品製造業分野)のポイント
飲食料品製造業分野において「特定技能1号」ビザを考えるにあたり知っておきたいポイントを以下に解説をしていきます。
また、現在飲食料品製造業分野の「特定技能」ビザについては、「特定技能2号」は認められていません。
そのため、今後、飲食料品製造業分野が「特定技能2号」の対象になれば、在留期限に上限がなくなりますので、長期で雇用することも可能になると考えられます。
技能水準及び評価方法等
「特定技能1号」ビザを取得するためには、「飲食料品製造業技能測定試験(仮称)」に合格をする必要があります。
「特定技能評価試験」に全般については、以下の記事で詳しく解説をしています。↓
・特定技能評価試験に求められる試験水準等を解説!
飲食料品製造業技能測定試験(仮称)
この試験は、
飲食料品製造業分野における業務に関して、食品等を衛生的に取り扱う基本的な知識を有しており、飲食料品の製造・加工作業について、特段の育成 ・訓練を受けることなく、直ちにHACCP(原材料の受入れから最終製品までの 工程ごとに、微生物による汚染、金属の混入等の潜在的な危害要因を分析し、特に重要な工程を継続的に監視、記録する工程管理システム)に沿った衛生管理に対応 できる程度の業務に従事できるレベルであることを認定するものです。
この試験に合格することによって、一定の専門性・技能を用いて即戦力として稼働するために必要な知識 や経験を有するものと認められます。
HACCPとは
余談ですが、上記のHACCPとは、食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようする衛生管理の手法です。
評価方法
試験言語:現地語
実施主体:公募により選定した民間事業者
実施方法:コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式又はペーパ ーテスト方式
実施回数:国内外において、年おおむね10回程度を予定
開始時期:平成31年10月予定
とされています。
国内試験を受験できない人
国内で試験を実施する場合、
1、退学・除籍処分となった留学生
2、失踪した技能 実習生
3、在留資格「特定活動(難民認定申請)」により在留する者
4、在留資格「技能実習」による実習中の者
上記外国人は、在留資格の性格上、当該試験の受験資格を認めないとされています。
日本語能力水準及び評価方法等
「特定技能1号」ビザを取得する外国人には、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有するものことが求められますので、以下の試験の合格等が必要になります。
①日本語能力判定テスト(仮称)
この試験に合格することによって、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有するものと認められることから、基本的な日本語能力水準を有するものと評価されます。
評価方法について
実施主体:独立行政法人国際交流基金
実施方法:コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式
実施回数:年おおむね6回程度、国外実施を予定
開始時期:平成31年秋以降に活用予定
とされています。
②日本語能力試験(N4以上)
この試験に合格することによって、「基本的な日本語を理解することができる」 と認定されますので、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程 度の能力を有するものと認められ、本制度での受入れに必要となる基本的な日本語能力水準を有するものと評価されます。
評価方法
日本語能力試験は、
実施主体:独立行政法人国際交流基金及び日本国際教育支援協会
実施方法:マークシート方式
実施回数:国内外で実施。国外では 80 か国・地域・239 都市で年おおむね1回 から2回実施(平成 29 年度)
とされています。
日本語能力試験N4については以下の記事で解説をしています。↓
・特定技能ビザに必要な「日本語能力試験N4」とは?
技能実習を修了した外国人も特定技能に移行できる
飲食料品製造業分野に関連する第2号技能実習を修了した外国人は、各業務における「特定技能1号」に移行することができます。
従事する業務と技能実習2号移行対象職種との関連性は、以下の通りです。↓
<参照:「飲食料品製造業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」に係る運用要領から>
「技能実習制度」については、以下の記事で詳しく解説をしています。↓
・技能実習生って何?外国人の技能実習制度について徹底解説!
飲食料品製造業分野の特定技能ビザの業務内容は?
飲食料品製造業分野において受け入れる「1号特定技能外国人」が従事することができる業務は、
飲食料品製造業全般(飲食料品(酒類を除く。)の製造・加工、安全衛生)の業務です。
飲食料品製造業分野の「特定技能」ビザで外国人の方が行うことができる業務は、
・飲食料品製造業全般(飲食料品(酒類は除く。)の製造、加工、安全衛生)の業務です。
— ひーくん@外国人ビザの専門家 (@coolwork3) January 18, 2019
また、当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務(原料の調達・受入れ、製品の納品、清掃、事業所の管理の作業等)に付随的に従事すること は差し支えないとされています。
飲食料品製造業分野の対象
ここでいう飲食料品製造業分野の対象は、「日本標準産業分類」に該当する事業者が行う業務となっています。
「日本標準産業分類」では、
09 食料品製造業
101 清涼飲料製造業
103 茶・コーヒー製造業(清涼飲料を除く)
104 製氷業
5861 菓子小売業(製造小売)
5863 パン小売業(製造小売)
5897 豆腐・かまぼこ等加工食品小売業
が該当します。
参照:日本標準産業分類
外国人を雇用する会社(特定技能所属機関)に必要なこと
飲食料品製造業分野で「特定技能」ビザで外国人を雇用する「特定技能所属機関」にも求められることがあります。
1、「食品産業特定技能協議会(仮称)」 の構成員になること。
2、食品産業特定技能協議会に対し、必要な協力を行うこと。
3、農林水産省又はその委託を受けた者が行う調査等に対し、 必要な協力を行うこと。
4、登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の実施を委 託するに当たっては、協議会の構成員となっており、かつ、農林水産省及び協議会に対して必要な協力を行う登録支援機関に委託すること。
上記の事項について「特定技能所属機関」に条件が課されます。
特定技能所属機関については、以下の記事も参考にしてください。↓
・特定技能で受入れ先になる特定技能所属機関の基準について
外国人の雇用形態について
「特定技能」ビザで外国人を雇用する場合は、直接雇用であることが必要です。
したがって、派遣での就業はできませんので、注意が必要です。
まとめ
今回は、飲食料品製造業分野の「特定技能」ビザについて考えてきました。
2019年4月から新しくスタートする「特定技能ビザ」は外国人の受け入れに大きな変化を起こす可能性もありますので、しっかりと動向を追いかけていきたいところです。
今回の記事が皆様の参考になれば幸いです。
「特定技能」ビザについて解説した記事一覧は、以下の記事にまとめています。↓
・特定技能の在留資格について解説した記事一覧(まとめ)