2019年4月からスタートする新しい在留資格「特定技能」ビザでは、通常の就労ビザでは認められていなかった、外国人の単純労働が認められることになります。
そこで、今回は「特定技能」ビザの対象になる「特定産業分野」の一つである「自動車整備分野」における「特定技能」ビザについて考えていきます。
今回の記事が皆様の参考になれば幸いです。
「特定技能」ビザ全般については、以下の記事で詳しく解説をしています。↓
・外国人の「特定技能」の在留資格について徹底解説します!
自動車整備分野で「特定技能」の外国人を受け入れる目的
自動車整備分野で「特定技能」の在留資格によって外国人を受け入れる目的・趣旨は、
「自動車整備分野において深刻化する人手不足に対応するため、専門性・技能を生かした業務に即戦力として従事する外国人を受け入れることで、自動車整備分野の存続・発展を図り、もって日本の経済・社会基盤の持続可能性を維持する。」
ことが目的とされています。
自動車整備分野は人手不足
自動車整備の業務に従事することができる「特定技能」ビザで外国人を受け入れる一つの理由として、自動車整備分野の人手不足をあげることができます。
自動車整備分野における労働力需要は、自動車の保有台数が、当面の間ほぼ横ばいで推移し、その点検整備の需要が減少する見込みがない一方、供給においては、 自動車整備士を志す若者の減少に加え、高齢の自動車整備士の引退が始まりつつあ り、平成 29 年度における自動車整備分野の有効求人倍率は 3.73 倍であるなど、深刻な人手不足の状態であると考えられています。
また、このような状況で、5年後において、1万 3,000 人程度の人手不足が生じると推計されています。
地域的に見ると、自動車整備分野においては、その地域において保有されている自動車台数により需要が決まります。
例えば、
自動車保有台数が多い愛知県及び埼玉県において自動車整備分野の有効求人倍率がそれぞれ 8.35 倍及び 6.08 倍となっています。
一方、自動車保有台数が少ない都道府県においても、
例えば、
富山県及び福井県にお いて当該有効求人倍率がそれぞれ 6.43 倍及び 5.77 倍である等、人手不足が生じている地域があります。
今日では、自動車整備分野は、自動車ユーザーからの委託に基づき自動車の点検整備を行うことにより、自動車の安全・環境性能の維持に係る基幹的役割を担い、日本の国民生活に不可欠な分野になっています。
そこで、人手不足を解消するために「特定技能」ビザで即戦力の外国人を受けれようと考えられています。
自動車整備分野では様々な取り組みも行われている
自動車整備分野では、人手不足の解消のために様々な取り組みが行われています。
①生産性向上のための取組
国土交通省では、
補助事業等により業界の取組を支援するとともに、生産性向上 のための取組として、
・「中小企業等経営強化法」に基づく 経営力向上計画の認定
・故障箇所の効率的な特定に必要な「外部故障診断装置」(ス キャンツール)の導入補助
等に取り組んでいます。
<参照:国土交通省 車載式故障診断装置(OBD)に関する制度と運用の状況>
②国内人材確保のための取組
国内人材の確保に関しては、若者・女性の就業促進のため、
・運輸支局長等による高等学校訪問
・自動車整備士のPRポスターや動画の作成、インターネットを活用した情報発信
・自動車整備工場の経営者に対する人材確保セミナーの開催
等に取り組んでいます。
国土交通省では、「自動車整備業における女性が働きやすい環境づくりのためのガイドライン」の策定なども行なっています。
<参照:国土交通省 「自動車整備業における女性が働きやすい環境づくりのためのガイドライン」>
外国人の受け入れ見込み数は?
自動車整備分野における向こう5年間の受入れ見込数は、最大 7,000 人であり、 これを向こう5年間の受入れの上限として運用されることになります。
この受け入れ数の根拠は、
「向こう5年間で1万 3,000 人程度の人手不足が見込まれる中、今回の受入れは、 5年で1%程度(5年間で 4,000 人程度)の生産性向上及び追加的な国内人材の確保 (5年間で 2,500 人程度)を行ってもなお不足すると見込まれる数を上限として受け 入れるものであり、過大な受入れ数とはなっていない。」
というところからきています。
特定技能1号(自動車整備分野)のポイント
自動車整備分野において「特定技能1号」ビザを考えるにあたり知っておきたいポイントを以下に解説をしていきます。
また、現在自動車整備分野の「特定技能」ビザについては、「特定技能2号」は認められていません。
そのため、今後、自動車整備分野が「特定技能2号」の対象になれば、在留期限に上限がなくなりますので、長期で雇用することも可能になると考えられます。
技能水準及び評価方法等
「特定技能1号」ビザを取得するためには、「自動車整備特定技能評価試験(仮称)」又は「自動車整備士技能検定試験3級」に合格をする必要があります。
「特定技能評価試験」に全般については、以下の記事で詳しく解説をしています。↓
・特定技能評価試験に求められる試験水準等を解説!
①自動車整備特定技能評価試験
この試験は、
道路運送車両法第55条に基づく「日常点検整備」、「定期点検整備」及び「分解整備」の実施に必要な能力を測るものです。
つまり、タイヤの空気圧、灯火装置の点灯・点滅、ハ ンドルの操作具合及びホイールナットの緩み等の点検整備に加え、エンジン、ブ レーキ等の重要部品を取り外して行う点検整備・改造を適切に行うことができることがを確認するものです。
試験に合格することによって、自動車整備分野において、一定の 専門性・技能を用いて即戦力として稼働するために必要な知識や経験を有するものと認められます。
評価方法
試験言語:日本語(必要に応じてルビを付す)
実施主体:一般社団法人日本自動車整備振興会連合会
実施方法:筆記及び実技方式
実施回数:年おおむね1回程度を予定、国外で実施
開始時期:平成31年度内予定
とされています。
自動車整備特定技能評価試験については、以下の記事で解説しています。↓
・自動車整備分野特定技能評価試験について解説!
②自動車整備士技能検定試験3級
この試験は、
道路運送車両法第55条に基づいて行われます。
つまり、「自動車整備士技能検定試験3級」は、道路運送車両法に基づく「日常点検整備」、「定期点検整備」及び「分解整備」の実施に必要な能力を測るための試験です。
試験に合格することによって、
タイヤの空気圧、灯火装置の点灯・点滅、ハンドルの操作具合及びホイールナットの緩み等の点検整備に加え、 エンジン、ブレーキ等の重要部品を取り外して行う点検整備・改造を適切に行うことができることが確認できるため、自動車整備分野において、一定の専門性・ 技能を用いて即戦力として稼働するために必要な知識や経験を有する者と認められます。
評価方法
「試験言語」・「 実施主体」・「実施方法」・ 「実施回数」・ 「開始時期」については、国土交通大臣が行う「自動車整備士技能検定試験のとおり」です。
自動車整備士技能検定については、国土交通省のホームページに試験の概要等が掲載されていますので、参考にしてください。
<参照:国土交通省 自動車整備士になるには>
日本語能力水準及び評価方法等
「特定技能1号」ビザを取得する外国人には、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有するものことが求められますので、以下の試験の合格等が必要になります。
①日本語能力判定テスト(仮称)
この試験に合格することによって、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有するものと認められることから、基本的な日本語能力水準を有するものと評価されます。
評価方法について
実施主体:独立行政法人国際交流基金
実施方法:コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式
実施回数:年おおむね6回程度、国外実施を予定
開始時期:平成31年秋以降に活用予定
とされています。
②日本語能力試験(N4以上)
この試験に合格することによって、「基本的な日本語を理解することができる」 と認定されますので、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程 度の能力を有するものと認められ、本制度での受入れに必要となる基本的な日本語能力水準を有するものと評価されます。
評価方法
日本語能力試験は、
実施主体:独立行政法人国際交流基金及び日本国際教育支援協会
実施方法:マークシート方式
実施回数:国内外で実施。国外では 80 か国・地域・239 都市で年おおむね1回 から2回実施(平成 29 年度)
とされています。
日本語能力試験N4については以下の記事で解説をしています。↓
・特定技能ビザに必要な「日本語能力試験N4」とは?
技能実習を修了した外国人も特定技能に移行できる
「自動車整備職種、自動車整備作業」の第2号技能実習を修了した者については、当該技能実習で修得した技能が、「1号特定技能外国人」が従事する業務で要する技能と、 道路運送車両法に基づく「日常点検整備」、「定期点検整備」及び「分解整備」を実施することができるという点で、技能の根幹となる部分に関連性が認められることから「特定技能1号」ビザに移行することができます。
「技能実習制度」については、以下の記事で詳しく解説をしています。↓
・技能実習生って何?外国人の技能実習制度について徹底解説!
自動車整備分野の特定技能ビザの業務内容は?
自動車整備分野において受け入れる「1号特定技能外国人」が従事することができる業務は、「自動車の日常点検整備」、「定期点検整備」、「分解整備」です。
また、当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務(例:整備内容の説明及び関連部品の販売、清掃等)に付随的に従事することは差し支えないとされています。
自動車整備分野の対象
ここでいう自動車整備分野の対象は、「日本標準産業分類」に該当する事業者が行う業務となっています。
「日本標準産業分類」では、
891 自動車整備業
が該当します。
参照:日本標準産業分類
外国人を雇用する会社(特定技能所属機関)に必要なこと
自動車整備分野で「特定技能」ビザで外国人を雇用する「特定技能所属機関」にも求められることがあります。
1、国土交通省が設置する「自動車整備特定技能協議会(仮称)」の構成員になること。
2、自動車整備特定技能協議会に対し必要な協力を行うこと。
3、国土交通省又はその委託を受けた者が行う調査又は指導に対し、必要な協力を行うこと。
4、道路運送車両法第 78 条第1項に基づく、地方運輸局長の認証を受けた事業場であること。
5、登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の実施を委託するに当たっては、以下の全ての条件を満たす登録支援機関に委託すること。
①上記1、2、3、の条件を満たすこと。
②自動車整備士1級若しくは2級の資格を有する者又は自動車整備士の養成施設において5年以上の指導に係る実務の経験を有する者を置くこと。
上記の事項について「特定技能所属機関」に条件が課されます。
特定技能所属機関については、以下の記事も参考にしてください。↓
・特定技能で受入れ先になる特定技能所属機関の基準について
外国人の雇用形態について
「特定技能」ビザで外国人を雇用する場合は、直接雇用であることが必要です。
したがって、派遣での就業はできませんので、注意が必要です。
まとめ
今回は、自動車整備分野における「特定技能」ビザについて考えてきました。
自動車整備分野でも人手不足が深刻な状況になっていますので、「特定技能」ビザを新設することによって、有効た対策になるように、課題などもしっかりと克服していくことが求められます。
今回の記事が皆様の参考になれば幸いです。
「特定技能」ビザについて解説した記事一覧は、以下の記事にまとめています。↓
・特定技能の在留資格について解説した記事一覧(まとめ)