日本人が外国人と国際結婚をした場合、そのまま日本に住むケースでは「日本人の配偶者等」という在留資格を一般的には外国人は取得することになります。
「日本人の配偶者等」の在留資格はその名称の通り、原則は日本人と結婚した場合に取得できます。
今回は、日本人と国際結婚をした外国人が日本に住む時に取得する「日本人の配偶者等」のビザについて書いていきます。
皆様の参考になれば幸いです。
外国人が日本で子供を出産した時の手続きについては、以下の記事も参考にしてください。↓
・外国人が日本で子供を出産した時の手続きについて解説!
日本人と外国人の国際結婚はどれくらいあるの?
厚生労働省が発表している「人口動態統計特殊報告 「婚姻に関する統計」の概況によると、平成28年のデータでは、「夫日本-妻外国」の夫妻における妻の国籍別婚姻件数の総数は、14 809件となっています。
また、妻日本-夫外国の夫妻における夫の国籍別婚姻件数の総数は、6 167 件と発表されています。
国籍別に見ると、アジア系の外国人と結婚している割合が高いことがわかります。
参照:厚生労働省 人口動態統計特殊報告 「婚姻に関する統計」の概況
国際結婚ではどちらの法律を使うの?
例えば、日本国内で日本人同士が結婚する場合は、民法や戸籍法で規定されている結婚に必要な条件や手続きを満たせば、結婚が成立します。
ここで疑問として上がるのは、日本国内で外国人と日本人が結婚するときは、一体どちらの国の法律を適用するのか?ということです。
その疑問を解決するためには、「法の適用に関する通則法」を知ることが鍵になります。
法の適用に関する通則法とは?
法の適用に関する通則法とは、簡単に言うと「どちらの国の法律を適用させるのか?」ということを規定している法律です。
外国人と国際結婚をした場合についても、法の適用に関する通則法第二十四条に以下のように規定されています。
法の適用に関する通則法第二十四条
婚姻の成立は、各当事者につき、その本国法による。
2 婚姻の方式は、婚姻挙行地の法による。
3 前項の規定にかかわらず、当事者の一方の本国法に適合する方式は、有効とする。ただし、日本において婚姻が挙行された場合において、当事者の一方が日本人であるときは、この限りでない。
上記内容を簡単にまとめると
少しややこしいですが、外国人と日本人が日本国内で結婚する場合は、
・日本人は日本の法律(民法)で規定されている婚姻の条件を満たしていること。
・外国人は母国の法律に規定されている婚姻の条件を満たしていること。
が必要になります。
外国人が法律上結婚できる要件を備えていることの証明方法は?
上述した通り、日本人と外国人が国際結婚をして、日本国内で婚姻手続きをするためには、外国人が法律上結婚できる要件を母国の法律で満たしていることを証明する必要があります。
婚姻要件具備証明書で証明する
外国人が法律上結婚できるということを証明するための書類の一つに「婚姻要件具備証明書」というものがあります。
婚姻要件具備証明書とは?
この婚姻要件具備証明書とは、その国の大使館や領事館等で発行してくれる書類で、外国人の本国法で決められた結婚の要件を満たしていることを証明してくれる文書になります。
つまり、婚姻要件具備証明書によって、
①結婚相手の外国人が独身であること。
②相手の国の法律で結婚することに問題ないこと。
上記2点を証明することができます。
日本の役所で婚姻要件具備証明書を提出
この婚姻要件具備証明書を取得した上で、市区町村役場に、「婚姻届」を届け出る際に訳文と一緒に提出することで、その届出が受理されると婚姻が成立します。
ただし、国籍などによって用意する書類は異なってきますので、事前に役所に確認を行い、必要書類を事前に聞いておくとスムーズに届出を行うことができます。
また、婚姻要件具備証明書を発行してもらえない国も中には存在していますので、その場合は「宣誓書」で対応するなど、別の方法で婚姻要件を満たしていることを証明する必要があります。
したがって、そのようなケースでは、大使館や領事館にどのような方法を取れば良いのか確認する必要があります。
日本人の配偶者等のビザ(結婚ビザ)とは?
日本人と結婚した外国人の多くは、「日本人の配偶者等」という在留資格を取得して日本に住むことが多いです。
「日本人の配偶者等」のビザは結婚ビザとも呼ばれることがありますが、正式名称は「日本人の配偶者等」という在留資格です。
日本人配偶者等の在留資格の該当範囲は「出入国管理及び難民認定法別表第二」によって以下のように規定されています。
出入国管理及び難民認定法別表第二
日本人の配偶者若しくは特別養子又は日本人の子として出生した者
と規定されています。
日本人の配偶者等の「等」には3つの意味がある
「日本人の配偶者等」の在留資格は、日本人と結婚した外国人だけが取得できる在留資格だと思われがちですが、「等」には、「特別養子」「日本人の子として出生した者」も含まれます。
例えば、私が経営している行政書士事務所でも、「元々日本人だったがアメリカ国籍に帰化をして、再度日本に滞在したい。」と言った相談が来ることがあります。
この場合は、元々日本人の子供として生まれているので、この場合でも「日本人の配偶者等」の在留資格を取得できる可能性があります。
国際結婚をして日本人の配偶者等のビザを取得するポイント
外国人と国際結婚をして、日本に住むために「日本人の配偶者等」の在留資格を取得する時に注意したいポイントを以下に書いていきます。
①日本人の配偶者の身分を有すること
ここでいう「配偶者」とは、現に婚姻関係中の者をいいます。
したがって、相手方の配偶者が死亡した者や離婚した者は含まれていません。
また、婚姻は法律的に有効である婚姻であることが必要であり、内縁の配偶者は含まれないことに注意が必要です。
②夫婦で同居していること
法律上婚姻が成立していたとしても、夫婦が同居していなければビザの申請は難しくなります。
結婚しているということは、「同居し、相互に協力し、扶助しあって社会通念上の夫婦の共同生活を営むという婚姻の実体」が伴っている必要があるからです。
そのため、そのような実体が伴っていない場合には、「日本人の配偶者等」の資格該当性は認められず、不許可にされる可能性が高くなります。
③収入が安定していること
「日本人の配偶者等」の在留資格を申請するにあたっては、ある程度収入が安定している必要があります。
日本に来る外国人は、日本国内でまだ仕事が決まっていないケースがありますので、妻の仕事の収入がある場合や、ある程度の貯蓄があり、しばらくは夫婦で生活していくことに支障がないことを、書類で立証することができれば、ビザ取得の時に有利に働くことになります。
日本人の配偶者等の申請方法は?
日本人の配偶者等の在留資格は、住所地を管轄する地方入国管理官署に対して申請をすることになります。
日本人の配偶者等の申請に必要な書類
日本人の配偶者等の申請に必要な書類は以下の通りです。
①在留資格認定証明書交付申請書
②写真(縦4cm×横3cm) 1葉
③配偶者(日本人)の方の戸籍謄本(全部事項証明書) 1通
申請人との婚姻事実の記載があるもの。婚姻事実の記載がない場合には,戸籍謄本に加え婚姻届出受理証明書の提出。発行日から3ヶ月以内のもの。
④申請人の国籍国(外国)の機関から発行された結婚証明書 1通
申請人が韓国籍等で戸籍謄本が発行される場合には,お二方の婚姻が記載された外国機関発行の戸籍謄本の提出でも差し支えはありません。
⑤配偶者(日本人)の住民税の課税(又は非課税)証明書及び納税証明書(1年間の総所得及び納税状況が記載されたもの) 各1通
⑥配偶者(日本人)の身元保証書[PDF] 1通
⑦配偶者(日本人)の世帯全員の記載のある住民票の写し 1通
⑧質問書[PDF] 1通
⑨スナップ写真(夫婦で写っており,容姿がはっきり確認できるもの)2~3葉
⑩392円切手(簡易書留用)を貼付した返信用封筒
などが必要になります。
また、上記書類以外にも収入状況の証明なども必要に応じて追加書類として、提出が求められることもありますので、指示があった場合は、その都度書類を提出していく必要があります。
日本人配偶者と離婚や死別した場合はどうなるの?
日本人と結婚して、「日本人の配偶者等」の在留資格を取得して日本に滞在していたが、その日本人と離婚や死別したケースでは在留資格はどうなるのでしょうか。
日本人と離婚や死別した場合は、「日本人の配偶者」としての地位を失うことになりますので、当然「日本人の配偶者等」の在留資格に該当しなくなります。
そのため、離婚や死別後も引き続き日本に滞在したい場合は、在留資格の変更許可を受ける必要が出てきます。
離婚や死別して直ちに「日本人の配偶者等」の在留資格が消滅する訳ではありませんが、そのままの状態では更新をしても認められません。
そのため、日本人との間に子供がいる場合は、「定住者」に変更したり、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で仕事ができるかなどを検討していく必要がでてきます。
在留資格については以下の記事も参考にしてください。↓
・外国人の在留資格についてわかりやすく解説します!
日本人の配偶者等の在留期間は?
日本人の配偶者等の在留資格は、5年・3年・1年または6ヶ月の期間となります。
そのため、期間が満了する前に、在留資格の更新手続きを行う必要があります。
中長期的に日本に住む外国人には在留カードが交付されます。以下の記事で詳しく解説しています。↓
・外国人の在留カードについてわかりやすく解説します!
外国人と結婚しても日本人配偶者の氏は変わらない
日本人同士が結婚をすると、夫か妻の氏を名乗ることになります。
しかし、外国人と結婚した場合は日本人の配偶者の氏の変更はありません。
そのため、結婚前の氏をそのまま名乗ることができます。
どうしても外国人配偶者の氏に変更したい時は、婚姻の日から6ヶ月以内に届け出ることをすれば、家庭裁判所の許可を得ることなく、外国人配偶者の氏に変更することができます。
その期間を超えてしまうと、家庭裁判所の許可が必要になりますので、注意が必要です。
就労制限が課されない
「家族滞在」で日本に来ている場合は、「資格外活動」の許可を取得して、一定の就労制限が課されます。
また、「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザについても、在留資格にあった活動しか認められていません。
しかし、「日本人の配偶者等」や「永住権」などの在留資格の場合は、就労制限が課されないので、就職することもできますし、自身で事業を経営することも可能です。
資格外活動については以下の記事も参考にしてください。↓
・資格外活動って何?留学生をアルバイトで雇用するときの注意点
まとめ
今回は、国際結婚をした場合に取得することになる、「日本人の配偶者等」のビザについて考えてきました。
日本に多くの外国人が来ているという事情もあり、国際結婚をする人も少しづつ多くなってきています。
日本人の配偶者等の在留資格について、しっかりとした知識を持つことで、幸せな結婚生活を送ることができると考えております。
今回の記事が皆様の参考になれば幸いです。
在留資格を持って日本に滞在している外国人が日本から出国する場合については、以下の記事にまとめていますので、参考にしてください。↓
・再入国許可とは?みなし再入国許可と合わせて徹底解説!