東京福祉大学が、多数の留学生の安易かつ不適切な受入れや不十分な在籍管理によって、大量の所在不明者、不法残留者等の発生を招いていた事件が発覚しました。
そのような事案が発生したことによって、文部科学省及び出入国在留管理庁が今後の外国人留学生の在留管理の徹底に関する新たな対応方針等をまとめて発表しました。
そこで、今回は発表された、外国人留学生の適切な受入れおよび在籍管理等の徹底方針等についてから、「留学生の在籍管理の徹底に関する新たな対応方針」について考えていきたいと思います。
皆様の参考になれば幸いです。
就労ビザを含む在留資格全般については、以下の記事も参考にしてください。↓
・外国人の在留資格制度とは?わかりやすく解説します!
留学生の在籍管理の徹底に関する新たな対応方針の概要
「留学生の在籍管理の徹底に関する新たな対応方針」の概要については、文部科学省及び出入国在留管理庁のホームページでも発表されていますので、以下に掲載しておきます。↓
<参照:文部科学省 留学生の在籍管理の徹底に関する新たな対応方針より>
上記の概要を以下で詳しく見ていきます。
正規・非正規・別科の留学生受入れに共通した対応方針
「留学生の在籍管理の徹底に関する新たな対応方針」では、「正規・非正規・別科の留学生受入れに共通した対応方針」と「非正規・別科・専門学校への追加的対応方針」について挙げられています。
まずは、以下に「正規・非正規・別科の留学生受入れに共通した対応方針」について記載していきます。
文部科学省の外国人留学生の対応策について
文部科学省では、
・外国人留学生の在籍管理状況の迅速、的確な把握と指導の強化
・在籍管理の適正を欠く大学等に対する在留資格審査の厳格化
といった大きく2つの対応策が行われるとされています。
外国人留学生の在籍管理状況の迅速・的確な把握と指導の強化
外国人留学生の在籍管理状況の迅速・的確な把握と指導の強化の対応策として、文部科学省は、
・各大学等への通知発出により在籍管理の徹底を再要請
・退学者・除籍者・所在不明者の定期報告の実施方法の見直し
・所在不明者等の発生状況に応じて在籍管理状況を調査、必要な改善指導を実施
の3つの対応策が挙げられています。
また、実態把握の手順は
1、長期欠席者(1ヶ月)の状況に応じて、原因分析と対応策の報告を要請
2、不法残留者、退学者、所在不明者等の発生状況に応じてヒアリング、実地調査等を実施
3、在籍管理が不十分な場合、改善指導
などの手順に沿って、実態把握が行われます。
在籍管理の適正を欠く大学等に対する在留資格審査の厳格化
上記で記載した改善指導を行なった結果、なお改善が見られない場合は、在籍管理非適正大学として法務省に通告されることになります。
また、上記以外にも文部科学省として、不法残留者等の発生状況を踏まえた私立大学等経常費補助金の減額・不交付措置の導入、在籍管理の適正を欠く大学等への制裁の強化(奨学金枠の削減、該当大学名の公表、政府主催の留学フェアへの参加制限) 等などの対応策なども挙げられています。
出入国在留管理庁の対応策について
文部科学省と連携して出入国管理庁は以下の対応策を講じるとされています。
・「在籍管理非適正大学」及び3年連続「慎重審査対象校」とされた大学等については、改善が認められるまでの間、留学生への在留資格 「留学」の付与を停止し、大学等名を文部科学省と同時に公表
・「慎重審査対象校」の判断基準の見直し及び同校の留学生の在留資格審査において、経費支弁能力に関する資料に加え、日本語能力について試験による証明を求めることを検討
といった対応策が挙げられています。
出入国在留管理庁については、以下の記事でも解説をしています。↓
・出入国在留管理庁について
慎重審査対象校とは
上述した「慎重審査対象校」とは、不法残留者数等にかんがみ、留学生の経費支弁能力等について慎重な審査を行う大学等を指します。
非正規・別科・専門学校への追加的対応方針
「非正規・別科・専門学校への追加的対応方針」では「非正規や別科(専ら日本語教育を行うもの以外)等を 活用する学校への対応方策」と「専ら日本語教育を行う別科(留学生別科) への対応方策」の2つが考えられています。
非正規や別科(専ら日本語教育を行うもの以外)等を活用する学校への対応方策
現状の課題として、学部研究生、別科(専ら日本語教育を行うもの以外)、専門学校を、実 質的に進学のための予備教育課程として運用し、日本語能力が十分でない 留学生を受入れている実態が懸念されています。
そこで、文部科学省と出入国在留管理庁では、以下の対応策を行っていくこととされています。
文部科学省の対応策について
文部科学省では、
・実質的に大学学部進学のための予備教育課程として運用されていないか、 大学入学相当(日本語能力試験N2相当)の日本語能力を入学時に求めているかについて確認し、法務省に通告
確認の観点について
・入学時の日本語能力要件(日本語能力試験N2相当)
・履修科目の正規課程科目との同一性
・日本語科目のレベル ・経費支弁能力の確認方法
等の事項が確認されます。
・専門学校についても所轄庁(都道府県)が同様の情報把握や地方出入国在留管理局への提供を行うよう、所轄庁に要請、あわせて確認の観点など必要なノウハウを提供
などの対応策が挙げられています。
出入国在留管理庁の対応策について
出入国在留管理庁では、
・大学学部進学のための予備教育を受ける場合は、上陸基準省令上の研究生・聴講生による在留資格「留学」の対象外とする。
そのため、留学生別科の新上陸基準での受入れに移行されることになり、日本語教育機関から実質的に日本語予備教育を受ける学部研究生等に進学した場合には在留期間の更新ができなくなります。
・専門学校についても、文部科学省、地方出入国在留管理局及び所轄庁との情報共有等の連携の枠組により、在籍管理が不適切な専門学校が判明した場合には、改善が認められるまでの間、留学生への在留資格「留学」の付与を停止し、専門学校名を所轄庁と同時に公表
などの対応策が挙げられています。
専ら日本語教育を行う別科(留学生別科)への対応方策
現状、専ら日本語教育を行う留学生別科について、教育の質確保や留学生の適正な受入れのための仕組みがないという課題があります。
そこで、文部科学省と出入国在留管理庁では、以下の対応策を行っていくこととされています。
文部科学省の対応策について
文部科学省では、
・専ら日本語教育を行う留学生別科について、日本語教育機関に関する法務省の告示基準に準じた上陸基準省令に基づく基準を策定
準用する告示基準の要素の例
・学則 ・教育課程 ・生徒数 ・教員・事務職員 ・施設・設備(校地・校舎、教室等)・入学者の募集・選考 ・在籍管理 ・抹消の基準等が挙げられています。
・留学生別科の教育施設・設備、教員の資質等が基準に適合するかどうかを確認、法務省に通告
などの対応策が挙げられています。
出入国在留管理庁の対応策について
出入国在留管理庁では、
・専ら日本語教育を行う留学生別科で受け入れる留学生の在留資格審査においては、当該別科が文部科学省による基準適合性の確認を受けていることを許可の要件とする
といった対応策が挙げられています。
まとめ
今回は、「留学生の在籍管理の徹底に関する新たな対応方針」について考えてきました。
在留資格「留学」から就労ビザ等に変更して日本で働く外国人も増えてきていますので、外国人留学生の現状を知っておくことはとても大切なことです。
今回の記事が皆様の参考になれば幸いです。
留学生などがアルバイトをする際に必要になる「資格外活動」については、以下の記事で解説をしています。↓