日本の製造業の海外展開が進んでいるという現状から、「製造業外国従業員受入事業」という制度が存在します。
そこで、今回は、「製造業外国従業員受入事業」について考えていきたいと思います。
皆様の参考になれば幸いです。
特定技能の在留資格について知りたい方や、雇用を検討している方は、以下の記事で詳しく解説をしています。↓
・外国人の「特定技能」の在留資格について徹底解説します!
製造業外国従業員受入事業とは?
「製造業外国従業員受入事業」とは、
・日本の製造業の海外展開が加速している状況において、日本にある事業所を人材育成や技能承継等の機能を有する国内生産拠点として、研究開発や設備投資を強化すること。
・上記研究開発等で確立された生産技術等をその事業者の外国にある事業所に普及させること。
などを実施することで、国内生産拠点と海外生産拠点の役割分担を図り、そのことにより、日本の製造業の国際競争力を強化するとともに、国内製造業の空洞化をおしとどめることを目的とした制度です。
つまり、海外の事業所で働いている外国人を、日本にある事業所で働きに来てもらい、知識やノウハウをその外国人に移転するということです。
ただし、「製造業外国従業員受入事業」の実施によって、国内生産拠点が海外に移転し空洞化が助長されるようなものは、日本にある事業所における従業員の雇用が圧迫されるため適当ではない。
とされています。
<参照:経済産業省 製造業外国従業員受入事業の概要より>
特定外国従業員受入企業とは?
「特定外国従業員受入企業」とは、製造業外国従業員受入事業を実施する製造事業者のことをいいます。
特定外国従業員とは?
「特定外国従業員」とは、製造業外国従業員受入事業において、製造特定活動計画に基づいて製造特定活動に従事する外国人のことをいいます。
この制度を利用することで、特定外国従業員には、在留資格「特定活動」が付与されることになります。
特定技能の在留資格については、以下の記事で詳しく解説をしています。↓
・特定活動の在留資格を解説!オリンピックの準備も対象に?
製造業外国従業員受入事業の制度を利用するには?
海外の事業所で働いている外国人を、「特定外国従業員」としてを受け入れるためには、「製造特定活動計画」を作成し、経済産業大臣に提出して、その認定を受ける必要があります。
「製造特定活動計画認定書」は経済産業省のホームページで掲載されていますので、以下に載せておきます。↓
特定外国従業員受入企業になるための条件は?
特定外国従業員受入企業になるためには、以下の条件のいずれにも該当する必要があります。
1、過去5年間に労働基準法、労働安全衛生法等の労働基準関係法令違反により罰金以上の刑に処せられたことがないこと。
2、労働関係法令及び社会保険関係法令を遵守していること。
3、労働安全衛生法等関係法令において講ずべきとされている労働災害防止のための最低基準を上回る労働災害を防止するための措置が講じられていること。
4、過去5年間に別表に掲げる製造特定活動に係る不正行為を行ったことがないこと。
5、特定外国従業員に従事させる業務に従事する相当数の労働者を過去3年間に非自発的に離職させていないこと。
6、製造特定活動計画の認定を取り消された場合、当該取消しの日から起算して5年を経過していること。
7、過去5年間に認定を受けた製造特定活動計画に反する重大な事実が生じていないこと。
8、製造業外国従業員受入事業に関する内容が、製造業外国従業員受入事業の趣旨に合致していること。
9、特定外国従業員になろうとする者に関する事項が次に掲げる要件を満たすものであること。
・特定の専門技術の移転の必要性や当該技術の内容等が、製造業外国従業員受入事業の趣旨に合致していること。
・製造特定活動に従事しようとする場所及び期間が1年を超えないこと。
・報酬予定額が同等の技能を有する日本人が従事する場合の報酬と同等額以上であること。
・外国の事業所での勤務期間が1年以上であること。
上記の要件を満たしていることが必要になります。
製造業外国従業員受入事業の申請をする際のポイント
「製造業外国従業員受入事業」の制度を利用する場合は、上述したとおり経済産業大臣からその認定を受ける必要があります。
以下に、申請を行う際に知っておきたいポイントについて解説していきます。
製造特定活動計画が本事業の趣旨に合致しているかどうか
上述したとおり、「製造業外国従業員受入事業」の制度を利用するためには、「製造業外国従業員受入事業の趣旨に合致していること。」が求められます。
この趣旨に合致しているかどうかのポイントは、経済産業省の「製造業外国従業員受⼊事業」のポイントでは、以下のように発表されています。
・受注条件として現地⽣産が課せられていること
・地産地消型の産業であって現時点で⽇本からの輸出実績がないこと
・新規⽣産拠点の設置により⽇本からの部品輸出増が⾒込まれること
・⽇本国内の⽣産体制、⽣産余⼒では対応できず、現地⼯場を新設すること
・ラインの増設や既存ラインの改良を⾏うこと(従来のオペレーションでは対応できないもの)
などが挙げられています。
つまり、海外需要の新規取り込みを目的とする生産活動であることが重要であるということです。
「特定外国従業員」に対する専門技術移転の必要性等が明確であること
「製造業外国従業員受入事業」の制度の活用により、国内⽣産拠点において、受け⼊れた現地従業員に対して、特定の専⾨技術を移転することになりますが、移転の必要性及びその内容を明確にすることが必要となります。
例えば、経済産業省からは以下のように発表されています。
特定の専門技術の移転の必要性のポイント
・受け入れる現地従業員が、修得していない技術であること。
・受け入れる現地従業員が、海外生産拠点に帰国した際に担う役割において必要な技術であること。
・当該技術の修得において、国内⽣産拠点におけるOJTが有効であること。
などを明確にすることが、重要であるとされています。
特定の専門技術の内容のポイント
・各⼯程のみではなく、全体⼯程の技術の修得を実施すること。
・⽣産管理や労務管理等のマネジメント能⼒の修得を実施すること。
・労働安全衛⽣や機械の安全管理等の知識の修得を実施すること。
・⼈材育成等に係る指導者としての知識の修得を実施すること。
などの内容であることが必要であるとされています。
つまり、受け⼊れた現地従業員は、事業終了後に、海外⽣産拠点において新製品や新技術の導⼊等に関して中⼼的な役割を果たすことが⾒込まれることから、単に、ある技術の修得のみを⽬的とするだけではダメだということです。
ただし、上記内容を全て含んでいることが求められている訳ではありません。
受け入れることになる外国人の要件は?
上述したとおり、「製造業外国従業員受入事業」の制度を利用するためには、様々な要件をクリアする必要がありますが、在留資格「特定活動」で外国人を受け入れるためには、外国人には、以下の条件が課されます。
1、海外⼦会社等において1年以上の勤務経験が必要
2、⽇本での滞在は最⻑1年(⼊国時に6ヶ⽉の滞在が認められ、1回に限り更新が可能)
3、家族滞在は不可
4、同等の技能を有する⽇本⼈が従事する場合の報酬と同等額以上の報酬を⽀払うこと
5、帰国後は、修得した特定の専⾨技術を要する業務に就くこと
6、特段の事情がある場合を除き、帰国後1年以内の解雇は禁⽌
などのことを順守する必要があります。
まとめ
今回は「製造業外国従業員受入事業」について考えてきました。
「製造業外国従業員受入事業」の趣旨は、生産技術等を事業者の外国にある事業所に普及させることです。
そのため、ただ単に労働力として外国人を日本で働かせることはできませんので、注意が必要です。
外国人を日本の企業で就労させる時には、しっかりと制度や趣旨を理解することがとても大切なことなので、企業側も制度の情報など最新の動向は常に確認しておくことが求められます。
今回の記事が皆様の参考になれば幸いです。
経済産業省が所管している特定産業分野の在留資格「特定技能」については、以下の記事で解説しています。