2019年4月から外国人が日本に滞在することができる在留資格として「特定技能」という在留資格が新設されます。
この「特定技能」ビザを取得することによって、通常の就労ビザでは就業ができなかった「単純労働」をすることも可能になります。
そこで、今回は宿泊業の分野における「特定技能」ビザについて解説をしていきます。
皆様の参考になれば幸いです。
「特定技能」ビザ全般については、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。↓
・外国人の「特定技能」の在留資格について徹底解説します!
宿泊業の人手不足に対応するため
「特定技能」ビザが新設される背景には、「労働力の深刻な人手不足を解消するための手段の一つ。」ということが考えれます。
日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2017年の外国人観光客は28,691,073人とされています。
上記グラフからも見て取れるように、日本に来る外国人観光客は年々増加しています。
また、日本政府も従来の目標であった、
2020年の訪日外国人旅行者数「2,000万人」から「4,000万人」
2030年の訪日外国人旅行者数「4,000万人」から「6,000万人」
の目標に変更して、観光先進国を目指しています。
そして、地方部(三大都市圏以外)での外国人延べ宿泊者数も、
2020年は7000 万人泊
2030 年は1億 3000 万人泊
を目標にしています。
宿泊業においても外国人の人材を受け入れる必要がある
上述したような、観光先進国を目指すためには、ホテルや旅館などの宿泊施設が必要不可欠になります。
現状でも宿泊業の人材が不足しているという状況の中で、外国人観光客の増加によって宿泊施設を利用する人数が増えることによって、さらに深刻な人手不足に陥ると考えることができます。
「国土交通省 観光庁」から発表されている2017年の「延べ宿泊者数」は、5億960 万人泊(日本人も含む)とされており、今後も増加すると考えると、人手不足の解消する方法を考えていく必要があります。
その一端として、2019年から新しい在留資格「特定技能」が新設されることになります。
宿泊分野の特定技能外国人の受け入れ見込みについて
宿泊分野における「特定技能1号」ビザで外国人を受け入れ予定人数は、今後5年間で最大22,000万人を上限として、制度が運用されていきます。
しかし、宿泊分野では向こう5年間で10万人程度の人手不足になると考えられていますので、国土交通大臣は、変化に応じ人材確保の必要性を再検討し、状況に応じて運用方針の見直しの検討・発議等の所要 の対応を行うともされています。
また、その逆もあり、受け入れ見込み数を超えることが見込まれる場合には、法務大 臣に対し、受入れの停止の措置を求めることができる。とされていますので、上限の22,000万人を超えてしまった場合は、受け入れができなくなるという自体も考えられます。
特定技能ビザ(宿泊業の分野)のポイント
宿泊業分野において、「特定技能1号」ビザを考えるにあたり知っておきたいポイントを以下に解説をしていきます。
技能水準及び評価方法等
「特定技能1号」ビザを取得するためには、「宿泊業技能測定試験(仮称)」を合格する必要があります。
この試験に合格することによって、一定の専門性・技能を用いて即戦力と して稼働するために必要な知識や経験を有するものと認められます。
「特定技能評価試験」に全般については、以下の記事で詳しく解説をしています。↓
・特定技能評価試験に求められる試験水準等を解説!
評価方法について
上記試験の評価方法等については、
試験言語:日本語
実施主体:一般社団法人宿泊業技能試験センター
実施方法:筆記試験及び実技試験
実施回数:国外及び国内でそれぞれおおむね年2回程度実施
開始時期:平成 31 年4月予定
とされています。
「宿泊業技能測定試験」に関することは、以下の記事でも解説をしています。↓
・宿泊業技能試験センターが行う宿泊業技能測定試験について
国内試験を受験できない人
国内で試験を実施する場合、
1、退学・除籍処分となった留学生
2、失踪した技能 実習生
3、在留資格「特定活動(難民認定申請)」により在留する者
4、在留資格「技能実習」による実習中の者
上記外国人は、在留資格の性格上、当該試験の受験資格を認めないとされています。
日本語能力水準及び評価方法等
「日本語能力判定テスト(仮称)」に合格した外国人は、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有するものと認めらますので、基本的な日本語能力水準を有するものと評価されます。
評価方法について
上記試験の評価方法等については、
実施主体:独立行政法人国際交流基金
実施方法:コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式
実施回数:年おおむね6回程度、国外実施を予定
とされています。
日本語能力試験(N4以上)でも可能
日本語能力試験(N4以上)の合格でも、「基本的な日本語を理解することができる」と認定されますので、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程 度の能力を有するものと認められます。
したがって、「特定技能」ビザでの受入れに必要となる基本的な日本語能力水準を有するものと評価されます。
評価方法について
日本語能力試験は、
実施主体:独立行政法人国際交流基金及び日本国際教育支援協会
実施方法:マークシート方式
実施回数:国内外で実施。国外では 80 か国・地域・239 都市で年おおむね1回 から2回実施(平成 29 年度)
とされています。
日本語能力試験N4については以下の記事で解説をしています。↓
・特定技能ビザに必要な「日本語能力試験N4」とは?
技能実習の修了
宿泊分野の「第2号技能実習」を修了した場合は、「特定技能」ビザを取得することができます。
しかし、現行法上では、宿泊業は技能実習の対象ではありませんので注意が必要です。
そのため、「出入国管理及び難民認定」が改正される2019年4月以降に宿泊分野の技能実習も「技能実習2号」の対象職種になる可能性があります。
技能実習2号の対象職種になることで、「技能実習」ビザから「特定技能」ビザに変更し、「技能実習」で3年、「特定技能1号」で5年の最長8年間日本で滞在することが可能になります。
「特定技能」ビザには、「特定技能1号」と「特定技能2号」があり、「特定技能2号」を取得できれば、在留期限に上限がなくなるので、更新さえできれば日本に滞在し続けることができますが、現状「特定技能2号」での受け入れは、もう少し先になりそうですので、「特定技能1号」で考えておくことが良いと考えることができます。
※追記
外国人技能実習法施行規則の一部改正によって、移行対象職種に「宿泊」が追加されます。↓
・外国人技能実習生の職種に宿泊が追加されることについて解説
技能実習については、以下の記事で詳しく解説をしています。↓
・技能実習生って何?外国人の技能実習制度について徹底解説!
宿泊分野の特定技能ビザの業務内容は?
宿泊分野において受け入れる1号特定技能外国人が従事することができる業務は、
宿泊施設における「フロント」「企画・広報」「接客 及びレストランサービス等の宿泊サービスの提供に係る業務」になります。
また、日本人が通常従事することとなる関連業務(例:館 内販売、館内備品の点検・交換等)に付随的に従事することは差し支えないとされています。
ただし、風営法上の「接待」などをすることはできません。
宿泊分野の対象
ここでいう宿泊分野の対象は、「日本標準産業分類」に該当する事業者が行う業務となっています。
「日本標準産業分類」では、
751 旅館、ホテル
759 その他の宿泊業
が該当します。
参照:日本標準産業分類
外国人を雇用する会社(特定技能所属機関)に必要なこと
「特定技能」ビザで外国人を雇用する「特定技能所属機関」にも求められることがあります。
宿泊分野において、外国人を「特定技能」ビザで雇用するためには、雇用側に
・旅館・ホテル営業の許可を受けていること
・外国人材受入協議会(仮)の構成員となること
・風営法上の施設に該当しないこと
・風営法上の接待行為を行わせないこと
が求められます。— ひーくん@外国人ビザの専門家 (@coolwork3) January 12, 2019
1、「旅館・ホテル営業」の許可を受けていること
2、風営法上の第2条6項4号に規定されている施設に該当しないこと
3、風営法上の「接待」を行わせないこと
4、宿泊分野における外国人材受入協議会(仮称)の構成員となること
上記4点について「特定技能所属機関」は遵守する必要があります。
特定技能所属機関については、以下の記事も参考にしてください。↓
・特定技能で受入れ先になる特定技能所属機関の基準について
特定技能所属機関が協力すべきこと
上記に、遵守すべきことを記載しましたが、「特定技能所属機関」は、泊分野における外国人材受入協議会(仮称)に対して、以下の事項について協力することが求められます。
1、1号特定技能外国人の受入れに係る状況の全体的な把握
2、問題発生時の対応
3、法令遵守の啓発
4、特定技能所属機関の倒産等の際の1号特定技能外国人に対する転職支援及 び帰国担保
5、就業構造の変化や経済情勢の変化に関する情報の把握・分析
などの協力をしていく必要があります。
外国人の雇用形態について
「特定技能」ビザで外国人を雇用する場合は、直接雇用であることが必要です。
したがって、派遣での就業はできませんので、注意が必要です。
まとめ
今回は、宿泊分野における外国人の「特定技能」の在留資格について考えてきました。
外国人の在留資格に関する法律は、複雑なので随時確認をしておくことがとても大切です。
今回の記事が皆様の参考になれば幸いです。
「特定技能」ビザについて解説した記事一覧は、以下の記事にまとめています。↓
・特定技能の在留資格について解説した記事一覧(まとめ)