外国人が日本に滞在するためには、滞在目的にあわせた在留資格を取得する必要があります。
例えば、日本の企業に就職する場合は「技術・人文知識・国際業務」、日本で会社を設立して代表として働く場合は「経営・管理」の在留資格などを取得する必要があります。
しかし、どの在留資格にも該当しない場合もあります。
そこで、「特定活動」の在留資格が必要になってきます。
今回は、この「特定活動」の在留資格について考えていきます。
皆様の参考になれば幸いです。
在留資格全般については、以下の記事で解説をしています。↓
・外国人の在留資格についてわかりやすく解説します!
特定活動ビザとは?
「特定活動」ビザは、いずれの在留資格にも該当しない活動を日本で行う外国人に対して、入国や在留を認める場合に法務大臣が個々に活動を指定する在留資格です。
2019年に「特定技能」という在留資格が新設されましたが、新しく在留資格を作るためには、法律の改正が必要になります。
しかし、「特定活動」ビザは上述したとおり、法務大臣が個々に活動を指定することができるので、法律を改正することなく、在留資格を付与することが可能になります。
特定活動の期間
「特定活動」ビザの在留期間は、5年、3年、1 年、6月、3月又 は法務大臣が個々に指定する 期間(5年を超えない範囲)とされています。
特定活動ビザの種類は?
上述したとおり、「特定活動」ビザは、「出入国管理及び難民認定法」において、「法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動」と規定されています。
特定活動の在留資格は、
・特定活動告示に規定する活動
・告示外特定活動
の大きく2種類に分けることができます。— ひーくん@外国人ビザの専門家 (@coolwork3) 2019年4月15日
その上で
①、法務大臣があらかじめ告示で定める活動(特定活動告示に関する活動)
②、上記①の告示で定められていない活動(告示外特定活動)
に分けることができます。
特定活動告示に関する活動とは?
「特定活動」ビザには、法務大臣があらかじめ告示で定める活動があります。(出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動を定める件)
「特定活動告示に関する活動」は多く存在していますが、いくつか以下に記載していきます。
外国人造船就労者
「外国人造船就労者」としての活動には、以下のように規定されています。
・本邦の公私の機関が策定し、国土交通大臣が認定した適正監理計画(外国人造船就労者受入事業に 関する告示にいう適正監理計画をいう。)又は企業単独型適正監理計画(同告示にいう企業単独型適正監理計画をいう。)に基づき、当該機関との雇用契約に基づいて造船業務に従事する活動。
また、「外国人造船就労者受入事業に関する告示」では、
・本告示は、緊急かつ時限的な措置として即戦力となる外国人造船就労者の受入れを行う外国人造船就労者受入事業について、その適正かつ円滑な実施を図ることが目的であるとされています。
ワーキングホリデー
ワーキングホリデーは、青少年が相手国の文化とその国の生活様式を知り、相互の理解を深めるために一定期間、観光などを目的として、日本に滞在し、その滞在期間中において、旅行資金を補充することができるようにするために、就労ができる制度であるとされています。
「ワーキングホリデー」としての活動には、以下のように規定されています。
・日本国政府のオーストラリア政府、ニュージーランド政府、カナダ政府、ドイツ連邦共和国政府、グレ ート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国政府、アイルランド政府、デンマーク王国政府、中華人民共和国香港特別行政区政府、ノルウェー王国政府、スロバキア共和国政府若しくはオーストリア共和国政 府に対するワーキング・ホリデーに関する口上書、ワーキング・ホリデーに関する日本国政府と大韓民国政府、フランス共和国政府、ポーランド共和国政府、ハンガリー政府若しくはスペイン王国政府との間の協定又はワーキング・ホリデーに関する日本国政府とポルトガル共和国政府、アルゼンチン共和国政府若 しくはチリ共和国政府との間の協力覚書の規定の適用を受ける者が、日本文化及び日本国における一般的な生活様式を理解するため本邦において一定期間の休暇を過ごす活動並びに当該活動を行うために必要な 旅行資金を補うため必要な範囲内の報酬を受ける活動。
ただし、以下のようにも規定されてるので、「風俗営業」や「風俗関連業務」には就労することはできません。
・風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第二条第一項に規定する風俗営業、同条第六項に規定する店舗型性風俗特殊営業若しくは同条第十一項に規定する特定遊興飲食店営業が営まれている営業所において行うもの又は同条第七項に規定する無店舗型性風俗特殊営業、同条第八項に規定する映像送信型性風俗特殊営業 、同条第九項に規定する店舗型電話異性紹介営業若しくは同条第十項に規定する無店舗型電話異性紹介営業に従事するものを除く。
ワーキングホリデーとしてビザを発給してもらうためには、
①一定期間、日本において主として休暇を過ごす目的であること。
②有効な旅券及び帰国のための旅行切符又は旅行切符を購入するための十分な資金があること。
③日本における最初の滞在期間の生計を維持するために相当な資金を所持していること。
④健康であること。
などの要件が求められますが、国によって年齢要件や滞在期間などが異なりますので、注意が必要です。
インターンシップ
「インターンシップ」としての活動には、以下のように規定されています。
・外国の大学の学生(卒業又は修了をした者に対して学位の授与される教育課程に在籍する者(通信による教育を行う課程に在籍する者を除く。)に限る。)が、当該教育課程の一部として、当該大学と本邦の公私の機関との間の契約に基づき当該機関から報酬を受けて、一年を超えない期間で、かつ、通算して当該大学の修業年限の二分の一を超えない期間内当該機関の業務に従事する活動。
外国の大学の学生には、通信による教育を行う課程に在籍する者は除かれているので注意が必要です。
また、インターンシップでも日本の公私の機関から報酬を受けない場合で、滞在期間が90日を超える時は「文化活動」の在留資格になり、滞在期間が90日を超えない場合は、「短期滞在」の在留資格になります。
サマージョブ
「サマージョブ」としての活動には、以下のように規定されています。
・外国の大学の学生(卒業又は修了をした者に対して学位の授与される教育課程に在籍する者(通信による教育を行う課程に在籍する者を除く。)に限る。)が、その学業の遂行及び将来の就業に資するものとして、当該大学と本邦の公私の機関との間の契約に基づき当該機関から報酬を受けて、当該大学における当該者に対する授業が行われない期間で、かつ、三月を超えない期間内当該大学が指定した当該機関の業務に従事する活動。
つまり、
①申請人が外国の大学の学生であること。(通信による教育を行う課程に在籍する者は除く。)
②学業の遂行と将来の就業に資すること。
③大学と日本の公私の機関との間に契約があること。
④外国人が日本の公私の機関から報酬をもらうこと。
⑤授業が行われていない期間であること。
⑥3か月を超えない期間であること。
などの条件を満たしていることが必要になります。
また、「インターンシップ」との違いは、「教育課程の一部」である必要はないので、単位を与える必要がないという点が大きく異なります。
高度専門職外国人の親
「高度専門職外国人の親」としての活動には、以下のように規定されています。
・高度専門職外国人(申請の時点において、世帯年収が八百万円以上の者に限る。)と同居し、かつ 、当該高度専門職外国人若しくはその配偶者の七歳未満の子を養育し、又は当該高度専門職外国人の妊娠中の配偶者若しくは妊娠中の当該高度専門職外国人に対し介助、家事その他の必要な支援をする当該高度専門職外国人の父若しくは母又は当該高度専門職外国人の配偶者の父若しくは母(当該高度専門職外国人及びその配偶者のうちいずれかの父又は母に限る。)として行う日常的な活動。
高度専門職については、以下の記事でも解説をしています。↓
・外国人の高度人材ポイント制!高度専門職について徹底解説
高度専門職外国人の配偶者
「高度専門職外国人の配偶者」としての活動には、以下のように規定されています。
・高度専門職外国人の配偶者(当該高度専門職外国人と同居する者に限る。)が、本邦の公私の機関との契約に基づいて、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けて行う別表第五に掲げるいずれかの活動。
ここで規定されている、「別表五」の活動とは、以下のとおりです。
1、研究を行う業務に従事する活動
2、本邦の小学校(義務教育学校の前期課程を含む。)、中学校(義務教育学校の後期課程を含む。)、 高等学校、中等教育学校、特別支援学校、専修学校又は各種学校若しくは設備及び編制に関してこれに準ずる教育機関において語学教育その他の教育をする活動
3、自然科学若しくは人文科学の分野に属する技術若しくは知識を必要とする業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(法別表第一の二の表の研究の項、教育の項及び興行の項の下欄に掲げる活動を除く。)
4、興行に係る活動以外の芸能活動で次に掲げるもののいずれかに該当するもの
・商品又は事業の宣伝に係る活動
・放送番組(有線放送番組を含む。)又は映画の製作に係る活動
・商業用写真の撮影に係る活動 ニ商業用のレコード、ビデオテープその他の記録媒体に録音又は録画を行う活動
アマチュアスポーツ選手とその家族
「アマチュアスポーツ選手」とその「家族」としての活動には、以下のように規定されています。
・オリンピック大会、世界選手権大会その他の国際的な競技会に出場したことがある者で日本のアマチュ アスポーツの振興及び水準の向上等のために月額二十五万円以上の報酬を受けることとして本邦の公私の機関に雇用されたものが、その機関のために行うアマチュアスポーツの選手としての活動。
・前号に規定する活動を指定されて在留する者の扶養を受ける配偶者又は子として行う日常的な活動。
告示外特定活動とは?
上述したとおり、「特定活動」ビザは、大きく「特定活動告示に関する活動」と「告示外特定活動」に分けることができます。
つまり、上記で記載した「告示されていない特定活動」でも、特別な事情があり法務大臣が在留を認めているものを「告示外特定活動」と言います。
例えば、以下のようなケースが考えられます。
大学等を卒業した留学生の就職活動
大学を卒業し又は専修学校専門課程において専門士の称号を取得して同教育機関を卒業した留学生等が、付与されている「留学」の在留資格の在留期間満了後も日本に在留して、継続して就職活動を行うことを希望する場合は、一定の要件を満たしていれば、「特定活動」の在留資格に変更をすることができます。
特定活動における就職活動については、以下の記事でも解説をしています。↓
・卒業後も就職活動!留学生の「特定活動」ビザを徹底解説!
特定活動ビザの指定書とは?
上述してきたとおり、「特定活動」の在留資格における活動は、多くの種類が存在しています。
そのため、単に「特定活動」という在留資格を付与するだけでは、第三者はどのような活動が認められているのかがわかりません。
そこで、指定書というものが発行され、具体的な活動内容が記載されることになります。
例えば、
「ワーキングホリデー」の場合は、「休暇を過ごす活動並びに当該活動を行うために必要な旅行資金を補うため必要な範囲内の報酬を受ける活動」と記載されることもあります。
また、
「留学生」が大学などを卒業後も就職活動を継続的に行う場合は、就職活動及び当該活動に伴う日常的な活動(収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を除く。)」などのように記載されることが考えられます。
指定書は基本的には、旅券(パスポート)に添付されることになります。
東京オリンピック・パラリンピックの関係者にも特定活動ビザが付与?
これまで、スポーツの国際大会などの関係者に対して、法務省は「短期滞在」の在留資格を付与してきましたが、滞在期間が90日と限定的であったため、大会組織委員から滞在期間を長くするように求められてきました。
そこで、法務省では「東京オリンピック・パラリンピック」の準備を円滑に進めるために、長期間日本に滞在することが必要になる海外の大会関係者に「特定活動」の在留資格を付与する方針を決定しました。
法務省によると、この「特定活動」の在留資格の対象者は、大会に向けた準備が必要な競技団体関係者や海外メディアを想定しています。
また滞在期間については、申請内容を踏まえて判断されることになります。
この申請は、2019年6月中旬から受け付けを始める予定で、事前に大会組織委員会への申請が必要になるとされています。
この「特定活動」ビザで在留が認められると在留期間中は出入国もでき、配偶者や子どもも帯同できるようになるそうです。
クールジャパン関連の仕事にも特定活動?
今後、新たな外国人材の活用に向け、「日本料理」や「アニメ・マンガ」などの「クールジャパン」と呼ばれている仕事に就労する外国人にも「特定活動」の在留資格を付与することが検討されています。
クールジャパンに関する在留資格については、以下の記事で解説をしています。↓
・クールジャパン産業(アニメ・マンガ等)の在留資格について
まとめ
今回は「特定活動」の在留資格について考えてきました。
「特定活動」ビザで活動できる範囲は、今後も拡大していく可能性があるので、しっかりと動向をチェックしていくことが大切です。
今回の記事が皆様の参考になれば幸いです。
在留カードについては以下の記事で解説をしています。↓