日本の大学又は大学院を卒業・修了した留学生の就職支援を目的として、法務省告示「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動を定める件」の一部が改正されることになりました。
この一部の改正により、日本の大学卒業者が日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務を含む幅広い業務に従事することを希望する場合、在留資格「特定活動」による入国・在留が認められることになります。
そこで、今回は「留学生の就職支援のための法務省告示の改正」について考えていきたいと思います。
皆様の参考になれば幸いです。
外国人の在留資格全般については、以下の記事で詳しく解説をしています。↓
・外国人の在留資格制度とは?わかりやすく徹底解説します!
法務省告示の一部改正の内容は?
現在の制度では、「飲食店」「小売店」等でのサービス業務や製造業務等が主たるものである場合は、就労目的の在留資格が認められていませんでした。
しかし、民間企業等では、インバウンド需要の高まりや、日本語能力が不足する外国人従業員や技能実習生への橋渡し役としての期待もあり、「大学・大学院」において広い知識を修得し、高い語学力を有する外国人留学生に対して、幅広い業務で採用のニーズが高まっています。
そのような事情を鑑み、日本の大学を卒業した外国人留学生は、「大学・大学院」において修得した知識、応用的能力等を活用することが見込まれています。
そこで、日本語能力を生かした業務に従事する場合に当たっては、その業務内容を広く認めることで、在留資格「特定活動」により、該当する活動を認められることになりました。
つまり、日本の大学や大学院を卒業又は修了した優秀な外国人材の定着促進を図り,日本の経済社会の活性化が期待される外国人留学生の日本国内における就職の機会を拡大するために、法務省告示の改正がされるということになります。
特定活動の告示が改正されると外国人留学生の就職先が拡大する
特定活動告示が改正によって
日本の大学、大学院を適正に卒業・修了した外国人留学生が「特定活動」の在留資格によって、就職できる業種の幅が広がる可能性があります。— ひーくん@外国人ビザの専門家 (@coolwork3) 2019年5月16日
現状、外国人留学生が日本の企業に就職する場合は、「留学」の在留資格から「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に変更を行い、就職することが一般的です。
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に変更するためには、大学等で学んだ内容と業務の関連性がとても重要になり、企業側と外国人留学生が雇用契約について、合意していても在留資格変更が不許可になるというケースがあります。
つまり、日本の大学・大学院を卒業・修了した留学生については、専門的・技術的知識に加えて、高い日本語能力を有しているため、幅広い分野での活躍が期待されるものの、従事しようとする業務内容が現行の在留資格に当てはまらないとして就労が認められないということが多分にあります。
また、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、単純労働は認められていませんので、単純労働させることを目的した雇用を認められていません。
しかし、今回の「特定活動」告示の改正により、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格では就労が認められなかった、外国人留学生が就職できる業種の幅が広がるとされています。
特定活動告示の改正の趣旨について
特定活動告示の改正の趣旨は、
・日本の大学(四年制大学)又は大学院の課程を適正に卒業・修了した留学生は、日本の文化に触れながら学んだ日本の良き理解者であり、在学中に修得した知識や、日本語を含む語学力を活用する業務が含まれている場合、その就職を認めることとする。
と法務省から発表されています。
<参照:法務省 日本の大学を卒業した留学生の就職支援〜特定活動告示の改正〜より>
在留資格「特定活動」ビザを取得するための要件について
今回の特定活動告示の改正によって、外国人留学生が「特定活動」の在留資格を取得するための要件は、現段階で公表されている情報によると以下の要件が必要であるとされています。
常勤の従業員として雇用・日本の大学又は大学院において修得した知識や能力等を活用することが見込まれること
つまり、正社員等のように常勤(フルタイム)で雇用することが前提になります。
また、日本の大学や大学院で学んだ知識や能力等を活用することが求められていますので、「技術・人文知識・国際業務」と同様に、単純労働での雇用は認められないと考えることができます。
日本の大学を卒業又は大学院の課程を修了して学位を授与されたこと
日本の大学や大学院を卒業していることが必要ですが、短期大学は含まれていませんので注意が必要です。
そのため、専門学校や短期大学を卒業する外国人留学生は通常通り「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格に変更して就労する必要があります。
日本人と同等額以上の報酬を受けること
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格と同様に、日本人と同等以上の報酬を支払う必要があります。
そのため、不当に低賃金で雇用することは当然に認められません。
高い日本語能力を有すること
外国人留学生が「特定活動」の在留資格を取得するためには、高い日本語能力が求められます。
この日本語能力には、日本語能力試験N1レベル等が必要であるとされています。
また、日本語能力試験N1以外でも、試験又はその他の方法によって同様のレベルであることを証明することができれば問題ないとされています。
ちなみに、日本語能力N1は日本語能力試験の中では最も難易度が高いレベルです。
在留資格「特定技能」では、N4レベルが求められていましたので、間違わないように注意が必要です。
日本語能力試験N4については、以下の記事で解説しています。↓
・特定技能ビザに必要な「日本語能力試験N4」とは?
また、出入国在留管理庁が参考にしていると考えられる日本語能力試験は、日本語能力試験とは別に、
・実践日本語コミュニケーション検定・ブリッジ(PJC Bridge)
などの試験が考えられます。
就職することができない業務は?
以下の業務については、今回の特定活動告示の改正によっても就労することはできませんので注意が必要です。
・風俗営業活動
・法律上資格を有する者が行うこととされている業務(業務独占資格を要する業務)
などの業務は認められていません。
「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」「技能実習」と「特定活動」について
「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」「技能実習」の在留資格も、就労することが可能です。
そのため、法令違反等にならないために上記在留資格の違いについては、しっかりと理解しておくことが必要です。
「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」「技能実習」「特定活動」の在留資格については、以下の記事で解説していますので、ぜひ参考にしてください。↓
・特定活動の在留資格を解説!オリンピックの準備も対象に?
外国人留学生の就職支援に係る政府の方針について
外国人留学生の就職支援は国を上げて行なっていこうと力を入れています。
以下政府の方針について書いていきます。
日本再興戦略改2016
日本再興戦略2016では、外国人留学生の日本国内での就職率を現状の3割から5割に向上を目指す。とされています。
骨太の方針2018
骨太の方針2018では、在留資格に定める活動内容の明確化や、 手続負担の軽減などにより在留資格変更 の円滑化を行い、留学生の卒業後の活躍の場を広げる。とされています。
外国人材受入れ・共生のための総合的対応策
外国人材受入れ・共生のための総合的対応策では、平成30年度中に大学を卒業する留学生が 就職できる業種の幅を広げるため、平成31 年3月を目途として在留資格に係る告示改 正を行う。とされており、今回の特定活動告示改正のことが書かれています。
まとめ
今回は、外国人留学生における特定活動告示の改正について考えてきました。
制度の詳細がわかり次第、この記事でも加筆していきますので、今後の動向に注目していきたいと思います。
今回の記事が皆様の参考になれば幸いです。
就労系の在留資格についてはの記事は、以下の一覧から見ることができます。↓