外国人が在留資格を取得して、日本に滞在をしていたとしても、その在留資格が「取り消される」ということもあります。
今回は、「在留資格の取り消しとは?」ということについて解説していきます。
皆様の参考になれば幸いです。
在留資格については、以下の記事を参考にしてください。↓
・外国人の在留資格制度とは?わかりやすく徹底解説します!
在留資格の取り消しとは?
在留資格を取得して日本に滞在している外国人は、その在留期間中、付与された在留資格に基づいて日本で生活をすることになります。
しかし、在留資格を取得する過程で嘘をついたり、日本に在留中に行なった行為などによって、在留期間中でもその在留が打ち切られることがあります。
その在留を打ち切る制度の一つに「在留資格の取り消し」があります。
在留資格が取り消されるのはどのような場合?
在留資格が取り消される場合の根拠は、「出入国管理及び難民認定法第22条」に規定されています。
出入国管理及び難民認定法第22条4
一 偽りその他不正の手段により、当該外国人が第五条第一項各号のいずれにも該当しないものとして、前章第一節又は第二節の規定による上陸許可の証印(第九条第四項の規定による記録を含む。次号において同じ。)又は許可を受けたこと。
二 前号に掲げるもののほか、偽りその他不正の手段により、上陸許可の証印等(前章第一節若しくは第二節の規定による上陸許可の証印若しくは許可(在留資格の決定を伴うものに限る。)又はこの節の規定による許可をいい、これらが二以上ある場合には直近のものをいうものとする。以下この項において同じ。)を受けたこと。
三 前二号に掲げるもののほか、不実の記載のある文書(不実の記載のある文書又は図画の提出又は提示により交付を受けた第七条の二第一項の規定による証明書及び不実の記載のある文書又は図画の提出又は提示により旅券に受けた査証を含む。)又は図画の提出又は提示により、上陸許可の証印等を受けたこと。
四 偽りその他不正の手段により、第五十条第一項又は第六十一条の二の二第二項の規定による許可を受けたこと(当該許可の後、これらの規定による許可又は上陸許可の証印等を受けた場合を除く。)。
五 別表第一の上欄の在留資格をもつて在留する者が、当該在留資格に応じ同表の下欄に掲げる活動を行つておらず、かつ、他の活動を行い又は行おうとして在留していること(正当な理由がある場合を除く。)。
六 別表第一の上欄の在留資格をもつて在留する者が、当該在留資格に応じ同表の下欄に掲げる活動を継続して三月(高度専門職の在留資格(別表第一の二の表の高度専門職の項の下欄第二号に係るものに限る。)をもつて在留する者にあつては、六月)以上行わないで在留していること(当該活動を行わないで在留していることにつき正当な理由がある場合を除く。)。
七 日本人の配偶者等の在留資格(日本人の配偶者の身分を有する者(兼ねて日本人の特別養子(民法(明治二十九年法律第八十九号)第八百十七条の二の規定による特別養子をいう。以下同じ。)又は日本人の子として出生した者の身分を有する者を除く。)に係るものに限る。)をもつて在留する者又は永住者の配偶者等の在留資格(永住者等の配偶者の身分を有する者(兼ねて永住者等の子として本邦で出生しその後引き続き本邦に在留している者の身分を有する者を除く。)に係るものに限る。)をもつて在留する者が、その配偶者の身分を有する者としての活動を継続して六月以上行わないで在留していること(当該活動を行わないで在留していることにつき正当な理由がある場合を除く。)。
八 前章第一節若しくは第二節の規定による上陸許可の証印若しくは許可、この節の規定による許可又は第五十条第一項若しくは第六十一条の二の二第二項の規定による許可を受けて、新たに中長期在留者となつた者が、当該上陸許可の証印又は許可を受けた日から九十日以内に、法務大臣に、住居地の届出をしないこと(届出をしないことにつき正当な理由がある場合を除く。)。
九 中長期在留者が、法務大臣に届け出た住居地から退去した場合において、当該退去の日から九十日以内に、法務大臣に、新住居地の届出をしないこと(届出をしないことにつき正当な理由がある場合を除く。)。
十 中長期在留者が、法務大臣に、虚偽の住居地を届け出たこと。
偽り不正の手段で許可を受けた場合
この記事では、上記法律を全て解説はできませんが、いくつか抜粋して取り消し事由を解説していきます。
「偽り不正の手段で許可を受けた場合」は在留資格の取り消し事由に該当します。
「偽り不正の手段で許可を受けた場合」とは、例えば「在留資格の新規申請」「在留資格の更新申請」などを行う際に、虚偽の資料を提出したり、申請書に虚偽の内容を記載した場合が考えられます。
付与された本来の在留資格の目的にあった活動をしていない
外国人が日本で中長期在留する場合は、在留資格を取得し、在留カードが発行されます。
当然、その在留資格にあった活動を行う必要があります。
しかし、例えば
「経営管理」ビザで日本に来ている外国人が、会社経営を行わずに、アルバイトをしている場合などは、本来与えられた在留資格に応じた活動をしていないことになります。
また、「技術・人文知識・国際業務」ビザで日本の会社で働いている外国人が、会社経営を行なっている場合なども、本来の在留資格の目的にあった活動をしているとは言えません。
このような場合は、在留資格の取り消し原因になります。
在留資格として与えられた本来の活動を3ヶ月以上していない
例えば、「技術・人文知識・国際業務」ビザで日本に来ている外国人が、雇用されている会社を退職して、3ヶ月以上、転職活動などの動きを取らず就職していない場合などは、在留資格の取り消し原因になります。
しかし、正当な理由がある場合は、3ヶ月以上活動を行なっていなかったとしても、取り消し原因にはならない場合もあります。
例えば、
①稼働先を退職後,再就職先を探すために会社訪問をするなど具体的な就職活動を行っていると認められる場合。
②在籍していた教育機関が閉校した後,他の教育機関に入学するために必要な手続を進めている場合
③病気治療のため長期間の入院が必要でやむを得ず教育機関を休学している者が,退院後は復学する意思を有している場合
④専修学校を卒業した留学生が本邦の大学への入学が決定している場合
などのケースが考えられます。
日本人の配偶者等・永住者の配偶者等は6ヶ月間になる
上記で書いたように3ヶ月間、与えられた在留資格に応じた活動をしなければ、在留資格の取り消し原因になると書きましたが、「日本人の配偶者等」ビザ・「永住者の配偶者等」ビザの場合は6ヶ月となります。
例えば、日本人と結婚した外国人が、その日本人と離婚してから、在留資格に変更するなどしないまま6ヶ月経過する場合などが考えられます。
ただし、こちらも正当な理由がある場合は、在留資格の取り消し原因にはならないこともあります。
「正当な理由」とは例えば、
①配偶者からの暴力(いわゆるDV(ドメスティック・バイオレンス))を理由として,一時的に避難又は保護を必要としている場合
②子供の養育等やむを得ない事情のために配偶者と別居して生活しているが生計を一にしている場合
③本国の親族の傷病等の理由により,再入国許可(みなし再入国許可を含む。)による長期間の出国をしている場合
④離婚調停又は離婚訴訟中の場合
などが認められれば、「正当な理由」として取り消し原因にはならないケースもあります。
90日以内に住居地の届出をしない場合
在留資格の新規許可や、変更を行なった場合など、新たに中長期在留者になった場合は、90日以内に住居地の届出を法務大臣にする必要があります。
ただし、「住民基本台帳法第30条」では、住所地について市町村長に届出をしなければならないとされています。
また、「出入国管理及び難民認定法第19条」では、上記「住民基本台帳法」に基づいた転入・転居等の手続きをすることで、法務大臣に対して住居地についての届出をしたこととみなされることになっていますので、14日以内に市町村に届出をしておく必要があります。
しかし、届出をしないことについて「正当な理由」がある場合は、取り消し原因にならない可能性もあります。
「正当な理由」とは、例えば
①勤めていた会社の急な倒産やいわゆる派遣切り等により住居を失い,経済的困窮によって新たな住居地を定めていない場合
②配偶者からの暴力(いわゆるDV(ドメスティック・バイオレンス))を理由として避難又は保護を必要としている場合
③病気治療のため医療機関に入院している等,医療上のやむを得ない事情が認められ,本人に代わって届出を行うべき者がいない場合
④転居後急な出張により再入国出国した場合等,再入国許可(みなし再入国許可を含む。)による出国中である場合
⑤頻繁な出張を繰り返して1回当たりの本邦滞在期間が短いもの等,在留活動の性質上住居地の設定をしていない場合
上記事由に該当する場合は、「正当な理由」として認められれば、在留資格の取り消し原因にはならないケースもあります。
また、届出を行なった場合でも、住所地について虚偽の届出をした場合も、当然在留資格の取り消し原因になります。
悪質な場合は退去強制になることも
在留資格の取り消しについて書いていきましたが、悪質性が高い場合は、在留資格の取り消しではなく、「退去強制」になる場合もありますので、法令はしっかりと遵守し、日本に滞在することが強く求められます。
退去強制については、以下の記事で詳しく解説しています。↓
・退去強制とは何?該当する人も合わせて解説します!
在留資格の取り消しの数は?
法務省の発表によると、取り消しが最も多い在留資格は、平成29年では「留学」ビザが最も多く172件とされています。
また、在留資格の取り消しの総数は、385件となっています。
以下、グラフを参考にしてください。↓
在留資格取り消しの事例
在留資格が取り消された事例の具体例をいくつか記載していきます。
①在留資格「日本人の配偶者等」を得るために,日本人との婚姻を偽装して,不実の婚 姻事実が記載された戸籍謄本等を提出した上,在留期間更新許可を受けた。
②当初から在留資格「技術・人文知識・国際業務」の活動に当たらない飲食店のホール 業務に従事する予定であったにもかかわらず,偽りの職務内容をもって申請を行い,当 該在留資格への変更許可を受けた。
③技能実習生が実習実施先から失踪後に,他の会社で稼働して在留していた。
④在留資格「技術・人文知識・国際業務」をもって在留する者が,稼働先を退職後,当 該在留資格に応じた活動を行うことなく,3か月以上本邦に在留していた。
⑤在留資格「日本人の配偶者等」をもって在留している者が,日本人配偶者と離婚した 後も引き続き,6か月以上本邦に在留していた。
など様々な事由により、在留資格が取り消されています。
まとめ
今回は在留資格の取り消しとは?ということについて考えてきました。
在留資格が取り消される。ということだけを聞くととても怖いものに聞こえますが、しっかりと日本の法律を理解して、法令遵守をする気持ちがあれば、心配はありません。
住所地の届出や、勤務先が変更した場合や、身分関係に変動があった場合など、忘れずに必要な手続きをしていくことが大切です。
今回の記事が皆様の参考になれば幸いです。
日本を出国する時の手続きについては以下の記事を参考にしてください。↓